クロノ・トリガー「クロノ・トリガー」のコード進行を徹底分析 ~モード感あふれるm7の短3度下降~
はじめに
今回は、スクウェア(現スクウェア・エニックス)の名作RPG「クロノ・トリガー」のタイトル曲、「クロノ・トリガー」のコード進行を解析してみる。
ゲーム音楽では、モード(教会旋法)的な音使いや、部分転調の多用など、ポップスではあまり登場しないサウンドも多い。こういった曲のコード進行を分析すれば、ハーモニーの引き出しが増えること間違いなし。
※コードは耳コピで採譜しています
イントロ~Aセクション(Key= G)
[Intro]
| Em/A | | F#m7 | |
| FM7 | | Bm/E | Em7 |
[A]
| Am7 | | F#m7 | |
| Am7 | | F#m7 | |
| FM7 | | Bm7/E | |
| CM7 | FM7 | Bm7/E | |
※便宜上Key = Gとしているが、一定の調性を保ちながら進んでいく曲ではないため、あくまで目安。
まずAセクションを見ていく(※イントロはAセクションの5小節目~とほぼ同じ進行なので省略)。
1~2小節目のコードはAm7。主旋律が7th(G音)や9th(B音)、11th(D音)、13th(F#音)を中心に構成されているため、独特の浮遊感が出ている。
3~4小節目はF#m7。Key= Gと考えた場合、ダイアトニックコードで考えるとF#m7-5となりそうなところ。しかしF#m7という、構成音にC#の音が入るコードとなり、不思議な響きになっている。ポップスでもこういった音使い(※一時的にリディアンやドリアン的な響きになる)は珍しくはないが、この箇所は主旋律にG#の音(9thのテンション)が入ってくる。これが非常に特徴的!そのためKey = Gという前提は崩れ、一定の調性で進んでいくと考えるのは難しくなる。ここだけ部分転調をしていると解釈したり、モード的に捉えるのが良さそうだ。
この「Am7 → F#m7」というコード進行、主旋律によるテンション・ノートの響きと相まって、非常に特徴的。クロノトリガーというゲームを特徴づけるような、印象的なサウンドだ。
5~8小節目は、1~4小節目の繰り返し。
9~10小節目はFM7(VIIbM7)。これはサブドミナントの代理コードや、下属調からの借用和音と解釈できるだろう。ポップスでもよく出てくる音使いだ。
11~12小節目は本来トニックのEmとなるところだが、調性をぼかすためにBm7/Eとしている。このコードはポップスやフュージョンでは頻出だ。
13~16小節目は、普通のIVM7から、先程のVIIbM7と進み、トニックのマイナーコードであるBm7/Eで締める形となっている。
以上がAセクションまでの解説となる。ちなみに、このセクションのコード進行は、「みどりの思い出」や、「遥かなる時の彼方へ」の間奏など、同じゲームの他の曲でも使われている。
Bセクション(Key = D)
| GM7(13) | A6(9) | Bm7(9) | Bm7(9)/A |
| GM7(13) | F#m7 | Bsus4 | B B/A |
| GM7(13) | A6(9) | Bm7(9) | Bm7(9)/A |
| GM7(13) | F#m7 |
Bセクションではkey = Dに転調するので、前のセクションから違和感なくつながっている。ここは「IV → V → VIm」という、ありふれたコード進行といえるだろう。テンション表記に関しては、高音のアルペジオのフレーズをもとに記している。
Aセクションとの対比で、落ち着いて聞かせるような場面となっている。
Cセクション(Key = G)
| CM7 | | D | |
| CM7 | | D | | Bm7/E |
ここから元のキーに戻る。コード進行は普通のIV→Vの繰り返し。最後はトニックのマイナーコードで終わるが、やはり調性をぼかすためにBm7/Eとしている。
おわりに
この曲のキーポイントは、なんといっても冒頭のAm7→F#m7というコード進行に尽きるだろう。テンションノートも上手く駆使しており、クロノトリガーというゲームの持つシリアスな雰囲気が上手く表現されている。