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宅録に必須!リフレクションフィルターを比較調査

リフレクションフィルターについて

そもそもマイクで良い音を録音するには、それなりの良い空間が必要。レコーディングスタジオは音響特性を考えて設計されているので、部屋の響きそのものが、録音に適した状態になっているのだ。

対して、普通の部屋は音響特性が良くない。望ましくない「部屋鳴り」まで歌と一緒に録音されてしまう。

部屋鳴りがマイクに入らないようにするためのアイテムが、リフレクションフィルターだ。マイクの周囲に特殊な素材の壁を作ることで、録音に適した空間を作り出す仕組みになっている。

今回は、各メーカーのリフレクションフィルターを比較調査してみる。

予備知識

なぜ部屋鳴りが起こるのか?

一般的な住居用の部屋は、壁が平行なのが良くない。発生した音は壁を何度も反射することになる。これを「フラッターエコー」と呼ぶ。録音の大敵となる現象で、部屋鳴りの原因のひとつとなる。

※平行な壁の中間で、手を「パン」と叩いてみると、ショートディレイがかかったような音が確認できるはず。

他にも低域の音波が常に発生している「定在波」など、一般の住居用の部屋では音響的な不都合がある。僕は音響エンジニアではないので詳細の説明は省くが、フラッターエコーや定在波については、以下のサイトで分かりやすく説明されている。

防音・調音で音環境を良くする!

リフレクションフィルターは商業スタジオでは使わない

きちんとしたレコーディングスタジオは、フラッターエコーや定在波といった良くない音響現象が起こらないように設計されている。

部屋の響きと、歌や楽器の響きを両方収録して、良い感じの録音ができるようになっている。そのためリフレクションフィルターを使う必要がない。

一部の小さい歌録りスタジオ等でたまにリフレクションフィルターを見かけることはあるが、プロ仕様のレコーディングスタジオでは基本的には使われていない。

リフレクションフィルターは、基本的に宅録のためのアイテムだといえる。

各種リフレクションフィルターの紹介

市販のリフレクションフィルターを4つ紹介する。

1. sE Electronics Reflection Filter Pro

sE Electronicsはリフレクションフィルターの先駆け的なメーカーだ。

※そもそも「リフレクションフィルター」という名称は、このメーカーの商品名が由来になっている。

フィルター部分は、それぞれ吸音特性が異なる素材で作られた9層のマルチレイヤーで構成されている。本家メーカーのオリジナルモデルだけあって、構造からは音響特性へのこだわりを感じる。

重量が3.6kg(※サウンドハウス調べ)と重いので、ストレートのマイクスタンドを使う必要がある。マイクスタンドの金属棒にクランプでパーツを締め付けて、そこに本体をセットする仕組みになっている。

片面が金属製でゴツいため、部屋に常設しておくとかなりの存在感がある。使うならスタジオ専用ルームがあったほうが良さそう。

なお上位モデルとしてReflexion Filter SPACEも存在する。フィルター部分が9層から10層に増えているが、それ以外はだいたい同じ仕様なので詳細は省く。

2. sE Electronics RF-X

フィルター部分は4層のマルチレイヤーとなっており、上位版とは仕様が異なる。それでも、「すべての周波数帯域で均等なフィルタリング効果」があるとうたっており、無名メーカーのものと比べると信頼性が高そう。

こちらは上位版とは異なり、マイクスタンドのネジに専用のマウント金具を取り付ける仕組み。そのためセッティングが楽になるが、マイクに角度をつけてセッティングすることはできない。上位版は業務用、こちらはホームスタジオ向けと言ったところだろうか。

重量は約2.4kg(※アメリカのAmazon調べ)と、上位版よりは軽くなっているが、こちらもストレートタイプのマイクスタンドの使用が推奨されている。今回紹介する中では最も安価なモデルだ。

3. Aston Microphones HALO

PETフェルト素材でマイクの周囲を大きく覆うような構造になっている。sE Electronicsの製品と比べて、デッドな音で録音することができる印象だ。

後述のEyeballのように高域が落ちることもないし、1.65kg(※Amazon調べ)と比較的軽量なのでホームスタジオでも取り扱いやすい。また、本体はネジ一本でマイクスタンドに取り付けられる構造になっている(下記動画0:15~参照)。このためセッティングがとても楽。

サイズは「441mm×538mm×302mm」とかなり大きい。しかし軽量でセッティングが簡単なので、使わないときは収納にしまっておくのもたやすい。

値段が少し高めなのと、サイズが大きくかさばるのが難点か。

4. Kaotica Eyeball

球体状のスポンジをマイクに被せて包み込むような構造の、ユニークなリフレクションフィルターだ。

通常、吸音材でマイクを包むような構造では音が多大にこもってしまうので、まともに録音するのは無理。この製品は、吸音するための素材や開口部のサイズを調整することで、上手く録音できるような設計がされている。

4つの中では最もデッドな音で録音できる。また、他と比較すると高域が若干削れる印象がある(もちろんセッティング次第で変わる部分だし、仕様上はフラットな特性となっているので、一概に「こもる」と言えるわけではないが)。

直径193mm、重量は113gと、今回紹介する中では最も小型・軽量となっている。マイクに被せるだけなので、セッティングは断トツで楽(他とは比較にならないレベル)。音さえ気に入れば、これがベストだろう。構造上、ノイズが多い部屋で録音したい人にも向いている。

注意点としては、ラージ・ダイアフラムのコンデンサーマイク以外だと使えないということだ(SM57やC451だとセットできない)。

音を比較している動画

HALO vs RF-Space vs Eyeball

この比較動画は参考になるはず。今回紹介していないReflexion Filter SPACEが出てくるが、音の傾向はReflection Filter Proに近いと考えてよい。

比較と結論

製品名 重さ 吸音度 取り回し 備考
RF Pro 重い やや大変 バランスの良い音
RF-X 普通 普通~楽 上記の廉価版
HALO 軽め 中~強 デッド気味、音バランス良し
Eyeball 超軽い とても楽 デッド、若干ハイ落ち傾向

個人的には、Aston Microphones HALOが断然オススメ。音が良いし、セッティングもしやすいからだ。前述の動画で紹介したとおり、あらかじめパーツを組み立てておけば、ネジを1本締めるだけでショックマウントまでいっぺんに取付可能なのが嬉しい。

常時セッティングしておけるだけのスペースがあればReflection Filter Proも選択肢に入ってくるが、部屋が広くない場合はHALOかEyeballが使いやすいはず。

またReflection Filter Proでは、マイクスタンドにパーツをクランプで固定する必要がある。マイクスタンドに傷が付きそうだし、ヤワなスタンドじゃ耐えられなさそうな印象もある。

※HALOの重量なら、ブームスタンドでも、まっすぐ伸ばして使えば問題ない。

セッティングのシンプルさを考えるとEyeballが最高なのだが、録り音の質感・取り回しやすさ・価格を総合的に考慮すると、HALOを買うのがベストだと僕は考える。