【教則本】作曲・編曲・DTMに役立つ、おすすめの本11冊

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この記事にたどり着いた人の中には、ふだん音楽制作の情報をネットで収集している人も多いかも知れない。しかし、インターネット上の情報は玉石混淆。鮮度の高い情報が入るというメリットはあるにせよ、時間を無駄にするリスクと常に隣り合わせだ。

音楽の本質的なルールや法則については、数百年に渡って変わらない部分も多い。音楽制作についての普遍的な知識を学ぶためには、やはり本を読むのが良い。

今回は、僕が読んだ本の中で特にオススメできるものを11冊紹介する。

リズムについて

『MPCで学ぶリズム打ち込み入門』

Watusi(著)

「サウンド&レコーディングマガジン」の連載を一冊にまとめた増刊号だ。

  • ロックの8ビート
  • テクノやハウスなどの4つ打ち
  • ヒップホップ/R&Bのリズム
  • ジャズの4ビート

このような基本的なジャンルのリズムパターンが、章ごとに紹介されている。

「○○というジャンルでは、△拍目の表(裏)で音を抜くのが肝」。こんな風に、この本を読めばジャンルごとのリズムのポイントを理解できるようになる。コンガやボンゴといったパーカッションのリズムパターンが紹介されているのも嬉しい。

ちなみに、「MPCで~」というタイトルだが、別にMPCを使わなくても、普通にDAWのMIDI打ち込みで使える内容になっている。

残念ながら現在絶版となっている。復刊に期待しよう(オークションでもプレミア価格が付いている。出版社には何かしらの対策を講じて欲しいところだ)。

MPCで学ぶリズム打ち込み入門

Tips集

『アレンジャーが教える編曲テクニック99』

マニュアル・オブ・エラーズ(著)

「テクニック99」シリーズはひと通り読んだが、この本が一番オススメ。メジャーの第一線で活躍するプロのアレンジャー数人の共著となっている。

音楽ジャンルごとのアレンジにおける要点。ギター、ストリングス、ブラス、コーラスといった楽器別のアレンジ方法。メロディへのコードの付け方。その他編曲を行う上で知っておきたい小話。こういった内容が、広く浅くまとめられている一冊だ。

難しい音楽理論の話は登場せず、コツをまとめた実践的なTips集として価値がある。「アレンジをしたいけど、何から手を付けていいのやら……」そんな初級者や中級者の人こそ、ぜひ読んでみてほしい良書。どのトピックも見開き2ページにまとめられているので、気軽に読める。

この本はなんと、AmazonのKindle Unlimitedの対象となっている。とはいえ、どう考えても無料で読めるのはおかしいレベルの本なので、普通に紙の本で買って、じっくり読み込んでみてもいいと思う。

アレンジャーが教える編曲テクニック99

『プロの曲作りが分かる本』

マニュアル・オブ・エラーズ(著)

『編曲テクニック99』と同じく、「マニュアル・オブ・エラーズ」の著書だ。こういった「プロが教える」的なタイトルの本はよくあるが、良い本は少ない。そんな中で、この本は実践的なTipsが中心になっていて、すんなりと曲づくりに役立てることができる。

編曲テクニック99とテーマが重複するトピックも多いが、編曲以外にも、ボーカルディレクション、アレンジ仕事におけるパラデータの作り方、キャッチーな曲を作るための方法論、楽曲構成の考え方など、プロの作曲家・編曲家として活動する上で、より実践的な内容が記されている。エンジニア的なテクニックにも触れられており、高品質なデモ音源が求められる現代の作曲家にとっては、一見の価値があるだろう。

プロの曲作りが分かる本

アレンジ(編曲)、オーケストレーション

※オーケストレーションといっても、今回紹介するのはジャズ~ポップス寄りの内容の本です。

『ブラス&ストリングス・アレンジ自由自在』

松浦 あゆみ(著)

ビギナーの人にオススメ。ポップスの曲にストリングスやブラスを入れる方法を学ぶには、この本で基本的な奏法を押さえるのがよい。

ボイスリーディング(声部の連結)についても少し紹介されているので、和声の考え方にも少し触れられるのが良い。

なお、この本では「歌メロのカウンターライン」という考え方には特に触れられていない。そのため、これ一冊読んだだけで自由自在にアレンジをするのは、実際は難しいかもしれない。あくまで、楽器の基本的な鳴らし方(ボイシング、定形フレーズ等)を学ぶための初歩的な本ととらえるのが良いだろう。

付属CDも付いているので、音で確認することもできる。

ブラス&ストリングス・アレンジ自由自在 完全版 (CD-ROM付)

『コンプリート・アレンジャー』

サミー・ネスティコ(著)

僕が特にオススメしたいのが、このアレンジ教本。サミー・ネスティコの『コンプリート・アレンジャー』だ。ジャズのコードの知識をひと通り習得した、中~上級者向けの本となっている。

アレンジ教本として有名なドン・セベスキーの『コンテンポラリー・アレンジャー』も良書だが、譜例に対応した音源が少ないのが弱点。対して、この本の付属CDには79曲も収録されている(重複はあるが)。総ページ数は349ページとボリュームも多い。

とにかく音源の曲数が多いので、それら全てに対応したスコアが読めるというだけでも、かなりの価値がある本だと思う。音楽は、言わば「百聞は一聴にしかず」のような部分もあるので、譜例の大半が音源とセットになっているのは非常に魅力的。付属音源は当然生演奏で、ノイズもなく高音質。

もっとも、手取り足取り教えてくれるような本ではない。スコアと音源から自分で分析していく必要もあるため、多少は独学的な要素が求められる。それでも、教本としての完成度は非常に高い。僕が読んだアレンジ教本の中では、最も参考になった一冊だ。

金管楽器やサックスの入った譜例は、ビッグバンドの曲が中心となっている。著者もビッグバンドの仕事が多かったようで、ビッグバンドのアレンジについて学びたい人にはもってこいの一冊だと思う。ボイシングのコツについても書かれているのが良い。

ストリングスや木管楽器の入った譜例は、テンションが多めのコードを使った、劇伴風/近代クラシック風の曲が多い。楽器の選び方、重ね方が非常に参考になる。

シンセサイザーを取り入れたオーケストレーションの譜例まである。シンセが入った譜例があるというのは、マンシーニの本やセベスキーの本など、他のアレンジ教本とは一線を画する部分ではないだろうか。

なお、一部の曲では複雑なテンションコードだけでなくアッパー・ストラクチャー・トライアドを使っていたりするので、音楽理論に詳しい人じゃないと分析が難しいかもしれない。

ここまで紹介してきておきながら、興味を持ってくれた方には申し訳ないのだが、残念ながら、この本は絶版となっている(良い本なのに)。ただし、英語版の原著は米Amazonで普通に売っている。解説を読むというよりも、スコアと音源を自分なりに読み解いていくというのが大事なので、英語が苦手な人でも、譜面と音源を目当てに輸入するのはアリだと思う。※Amazon.com(海外)のレビューでも絶賛されている。

コンプリート・アレンジャー CD付

『サウンズ&スコアーズ』

ヘンリー・マンシーニ(著)

ヘンリー・マンシーニという超有名な作曲家の著書というだけで、一見の価値がある。譜例は彼の手がけた作品から抜粋されているので、当たり前だが、ヘンリー・マンシーニっぽい雰囲気の曲ばかりだ。「ピーター・ガン」や「Mr. Lucky」といったドラマの音楽や、彼のソロ作品を題材にスコアが掲載されている。ただ、「ピンク・パンサー」「ティファニーで朝食を」といった名作映画の曲は残念ながら含まれていない。

前述の『コンプリート・アレンジャー』よりも、ポップで分かりやすい曲が多いので、取っつきやすい印象だ(とはいえ大部分の曲はジャズのフォーマットに基づいているが)。和声的にも通常のテンションコードが多く、ネスティコ本のように複雑なコードも出てこない。普通のポップスに応用するなら、こちらの本の方が役に立つと思われる。白玉でアレンジされているパートも多いので、ボイシングも確認しやすい。

曲の重複も多いが、付属CDには66トラック収録されている。音源にノイズがあるのと、各トラック冒頭の「譜例番号読み上げ」が少しうるさいのが惜しい。ページ数は207ページと、ネスティコ本よりはボリュームは少なめ。それでも、多くの譜例がCD音源に対応している。

曲は60年代のジャズらしい、柔らかいものが多い。スウィングジャズの曲や、ムーディな曲が中心だ。ディビジを駆使したストリングスでテンションコードを鳴らすような曲もあり、参考になる。

スコアは見やすい。手描き風などではなく、日本で売っている譜面のように、きちんとコンピュータで浄書されたタッチのスコアになっている。

サウンズ&スコアーズ

音楽理論

『楽典―理論と実習』

音楽之友社

通称「黄色い楽典」。音楽を学ぶ人の多くが手にしたであろう一冊だ。音符や休符、拍子、音程など、音楽の基礎事項について書かれている。特に音程に関する記述(長・短・増・減音程)は一枚の図で分かりやすくまとめられていて良い。

教科書的な基礎事項を確認したいときのために、手元に置いておきたい一冊だ。

楽典―理論と実習

『実践コードワーク Complete 理論編』

篠田元一(著)

ポピュラー音楽で使われるコードについて詳しく解説されている名著だ。ある程度基礎的なコードの知識を習得した、中級者~上級者向けの一冊。

テンションコード、分数コード、アッパーストラクチャートライアド等、複雑なコードについても網羅されている。モードに関しても触れられており、高度なポップス~ジャズ方面の音楽まで幅広くカバーできるだろう。

きれいに響くボイシングの例、テンションコードを押さえる際に省略すべき音、転調のきっかけを作る方法など、理論編でありながら、実践に即した記述が多いのが嬉しい。小難しくなりがちな理論書というジャンルにおいて、他とは一線を画する優れた一冊だ。

こういう少しハイレベルな理論書を読む場合は、ピアノでコードを押さえられる程度のスキルは持っておきたい。付属CDが付いているので、音を聞いて確認することもできるが、やはり自らの血肉とするためには、鍵盤を弾いて確認したいところだ。

※このブログでも、そういった趣旨の記事を書いている。 → 作曲家・アレンジャーがピアノを弾けるようになるメリット

なお残念ながら、この本も絶版となっている。復刊に期待したいところだ。

実践コードワーク Complete 理論編

『総合和声』

音楽之友社

オーケストレーションやストリングスアレンジのような高度な編曲を行う場合、ボイスリーディング(声部の連結)やボイシング(音の積み方)に気を使う必要がある。これらは、ポピュラー音楽のコード理論だけではカバーしきれない。

そこで必要になってくるのが和声学だ。和声のルール上、やってはいけないことは「禁則」と呼ばれているが、この禁則を知っておくことで、音をどのように展開させていくべきか迷わなくなる。これが非常に大きい。音楽制作をスムーズに行う上で強力な武器となる。

もし「和声上、正解とされているサウンド」が欲しい場合、和声を知らなければ、何度も試行錯誤する必要があるだろう。しかし和声を知っていれば、作るより先に音をイメージすることができる。

何を当たり前のことを……と思うかもしれないが、そもそも多くの人が気持ちよく感じる経験則をまとめたものが音楽理論。和声上の正解は、それなりに説得力があるサウンドであることが多いのだ。限られた時間を有効に使うためにも、和声を習得するのは意味のあることだと僕は考える。

なお、和声に関する教本は『和声―理論と実習』(通称「芸大和声」)の3巻セットが有名だが、この『総合和声』の方が新しい本で読みやすく、要点がよくまとまっており分かりやすい。独学で学ぶ場合は、なおさら総合和声の方ががオススメだ。

総合和声―実技・分析・原理

『対位法』

長谷川 良夫(著)

世の中の音楽はホモフォニックな音楽がほとんど(メロディという主役があり、コードという脇役がそれを支える構造)。しかし、対位法を知っていると、ポリフォニックな音楽を作ることができる。メロディの背景でコードを鳴らさなくても、単旋律を複数組み合わせることで、音楽を成立させることができるのだ。

そんな音楽作らないよ……と思うかもしれないが、「対位法で良しとされる音の運び」を知っておくと、ストリングスアレンジや、コーラスアレンジでとても役に立つ。何気ないハモリのパートであっても、コードトーンを繋ぐだけのメロディから一歩先に進んだ、一本の太いメロディに仕上げることができるだろう。

また、少ないパートで曲を成立させたいときにも、対位法の考えはおおいに役に立つ(最先端のEDM系ダンスミュージックでも、そういった作りの音楽をしばし耳にする)。

この「長谷川対位法」は文体も古く、やや読みづらいところもあるが、対位法を学ぶ上では定番の一冊だ。独習するのは大変だろうが、意欲のある人はトライしてみても良いと思う。

なお、対位法の概念は、和声の考え方に通じる部分も出てくる(例を挙げると、「並達5度・8度」に関する記述など)。なので、先に和声学をひととおり学んでおくのがオススメ。

対位法

録音・ミックスなど

『サウンド&レコーディングマガジン』

リットー・ミュージック

教則本ではなく雑誌だが、最後はコレ。サウンド&レコーディングマガジン、通称サンレコだ。音楽不況やレコーディングスタジオの相次ぐ閉鎖に伴い、最近はどの読者層をターゲットにしているのか分かりづらい部分もあるが、一昔前は、本当に権威あるプロ向けの雑誌だった。

とはいえ、レコーディング機材やエンジニアリングに関する雑誌の中では、やはり未だにサンレコが一番信頼できるだろう。某通販サイトのカタログページが多いのが玉にキズだが、今でも良い特集を行ってくれることは多い。たとえば、例年1月号で企画されているプライベートスタジオ特集は、読む価値が高いので買ってみてもいいと思う。音楽制作環境を構築する参考になるはずだ。

あと、チェックすべきはバックナンバー。プロのエンジニア数人に同じ素材をミックスしてもらう企画(マジカル・ミックスダウン・ツアー)や、プロのアレンジャー数人に同じ曲をアレンジしてもらう企画(マジカル・アレンジメント・ツアー)。そんなスゴい特集が普通に組まれていた。中古で見かけたら是非ゲットしておきたいところだ。

サウンド& レコーディング マガジン 2013年 06月号