capsule「Hello」のコード進行を解析

曲について

capsuleの「Hello」は、美しいコード進行と洗練された音使いが特徴的な一曲だ。中田ヤスタカ氏のセンスの高さを味わえるサウンドになっている。

コード進行

※Key = E
[Intro]
| (N.C.) |  |  | C#M7(9) |

[A]
| AM7(9) G#7sus4 | C#m7(9) Bm7(11) |
| A7(9,13) DM7(9) | F#m7/B EM7 |
| AM7(9) G#7sus4 | C#m7(9) Bm7(11) |
| A7(9,13) DM7(9) | G#7 C#M7(9) |

コード進行はこのようになっている(※耳コピで採譜したものです)。

1~2小節目(※Aセクションから数えています)の部分は、「4-3-6」という、R&Bやソウルでよく出てくるコード進行がベースになっている。

Grover Washinton Jr.の「Just the Two of Us」というR&Bのヒット曲で使用されているのが有名。

1小節目の3・4拍目は、通常なら次のコードに対するドミナントであるG#7となるところ。しかし、ここではあえてG#7sus4にすることで「進行感」を緩和し、浮遊感を出している。

※セブンスコードをsus4やDm7/Gのような分数コードに変えることで浮遊感を出すテクニックは頻出。

2小節目の3・4拍目のBm7(11)は、その次のコードに進行するためのツーファイブだ。本来Bm7(11)→E7のように進行するところだが、E7を省略することで進行感をぼかしている。

※Vm7(この曲でいうBm7)はポップスでは非常によく出てくる。前触れなしに使えることが多いので、テクニックとして身につけておきたい。

3小節目では、この曲で最も特徴的な、A7(9,13)というコードが出てくる。これは非ダイアトニックコードだが、次のDM7(9)に対するドミナント7thコードになっている。テンションを2つ加えることで、ここだけジャジーな雰囲気になっていて、独特のサウンド感を演出するのに一役買っている。

※DM7(9)、ディグリーで考えるとVIIbM7(9)というコードは、サブドミナントの代理的にポップスではよく出てくるコードだ。

5小節目以降はそれまでの部分のリピートになるが、特筆すべきは8小節目。G#7(→次のコードに対するドミナント)が初めて出てくる。そして、C#M7(9)というコードで終了する。結果的に、元のKey = Eにとっては6度のコードで終止することになるが、このC#M7(9)というコードは、平行調C#m)のトニックコードであるC#mを、メジャーコードに置き換えたものと解釈できる(クラシックの和声では「ピカルディの三度」と呼ぶ)。そこまで遠縁のコードではないため、不自然には聴こえないはず。

意外性をもたらすコード進行を取り入れているにも関わらず、楽曲が破綻することのないように調整されているのが見事だ。

また、それまで「進行感」を和らげるために封印していると思われていたG#7というコードを、ここぞとばかりに登場させているのも見事だ。この辺りは中田ヤスタカ氏の高い音楽センスが遺憾なく発揮されている部分といえるだろう。

PLAYER / capsule

間奏での変化

間奏はAセクションと同じコード進行だが、最後2小節だけ次のようになる(イントロのような感じ)。

| A7(9,13)  DM7(9) | C#M7(9) |

解決後のKey=C#で考えると、DM7(9)はサブドミナントマイナーの代理コード(IIbM7)となる。半音上のM7thコードからトニックに解決するという進行だ。

途中の小節を編集して取り除いたような、DJ的手法を取り入れた展開になっているにもかかわらず、結果的に自然なコード進行になっているのが面白い。

おわりに

中田ヤスタカ氏はダンスミュージック系のクリエイターだが、この楽曲のように、和声的な完成度が高い作品を作ることも多い。こういった一面は、その他のクラブ系ミュージシャンと一線を画している部分といえるだろう。氏の音楽的素養の高さをうかがい知ることのできる一曲だ。

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