【DAW】OS再インストール時のメモ~ その3:効率の良いソフトシンセの再インストール方法
※2017年12月4日 一部項目を加筆修正
はじめに
OSクリーンインストールの覚え書きも今回で最後。その1ではアクティベーション解除が必要なソフトシンセについて紹介した。その2ではDAW向けのWindowsの設定方法について解説した。
今回は、効率よくソフトシンセを再インストールする方法について解説する。
ピアノ音源やドラム音源などの中には、音源ライブラリをHDDから読み出して音を鳴らすものが多い。そういったソフトのインストール作業は、たいてい2つのプロセスに分かれている。
- ソフトウェア自体(dllファイル)のインストール
- 音源ライブラリのインストール
このうち、時間がかかるのは2の方。最近は2のプロセスを省略することができるソフトが多い。そういったソフトでは、あらかじめライブラリのフォルダを別のHDD(SSD)に入れておけば、ライブラリ部分の再インストールなしにスムーズな環境復旧が可能だ。
ただしこの技が使えるかどうかはソフトによって異なるし、その手順もまちまち。
またソフトによっては、インストールディスクからインストールしなければならないもの、アップデータだけでインストールできるもの、それぞれ存在する。
そこで僕が実際に再インストールを行ったときにまとめたメモを、記事にして公開してみる。OSクリーンインストールなどの際に役立ててほしい。
- はじめに
- Spectrasonics(Omnisphereなど)
- Native Instruments
- XLN Audio (Addictive Drums)
- Steinberg HALion Sonic
- Synthogy Ivory
- SWAMエンジン (Sample Modeling The Saxophonesなど)
- EastWest Symphonic Orchestra
- おわりに
Spectrasonics(Omnisphereなど)
ライブラリが別のHDDに入っていれば、再インストール時はアップデータのみをインストールすればOK(インストールディスクは必要ない)。
その手順は次のとおり。代理店のサイトにも記述があるが、完結にまとめ直した。※Windows想定。Macの人は適宜読み替えてください。
- 「C:ProgramData\Spectrasonics」というフォルダを作成する。
- Spectrasonics製品のライブラリが含まれているHDD(外付けHDDなど)から、STEAMフォルダを探す。
- 2のフォルダのショートカットを作成し、1に移動させる。
- アップデータをインストール(元のディスクは使わなくて良い)。
このようになる。これでインストール作業はすべて完了。ソフトを起動しオーサライズを済ませれば、問題なくプリセットが読み込める(=ライブラリ指定が問題なく行われている)ことが確認できるはず。
ちなみにこれはOmnisphreやTrilianの場合。Stylus RMXのときは、「STEAM」を「SAGE」と読み替えて同じことをすれば良い。
画像のように、「STEAM」と「SAGE」のショートカットフォルダが該当の箇所にあればOK。※画像に表示されているその他のファイルは、インストール後に生成される。
参考:Spectrasonics製品コンピュータ変更時のインストール方法(代理店サイト)
Native Instruments
※2017年12月4日 加筆修正
KOMPLETE11以降では「Native Access」というソフトウェアを使い、NI製品のインストールを管理することになる。
VSTプラグインの場所やライブラリの置き場所は、Nativ Access画面の右上、Preferenceから設定できる(全ソフトに影響する)。そこでライブラリのパスを指定しよう。
既にライブラリがインストール済みの場合、ライブラリの実質的なインストールは省略されるようだ(Battery4で確認)。ただし、Native Access上で形式上のインストールは行う必要がある。さもないとライブラリが反映されない。
Battery4では、ソフト上でファクトリーライブラリのパスの指定はできないので、再インストールの際も、やはりNative Access上でライブラリ部分のインストールを形式上行う必要はありそうだ。
Kontaktのライブラリについて
Kontaktの最新版では「Add Library」という、ライブラリを追加するコマンドがなくなってしまった。そこで、Kontaktのver 5.6.6にダウングレードして「Add Library」でライブラリを追加した後、再びKontaktの最新版にアップするという方法が公式で推奨されている(なんとも面倒な仕様だが……)。
(参考)KONTAKTライブラリが既に別のハードドライブにインストールされている場合にKOMPLETEバンドルを再インストールする方法
Sample Modeling社のThe Trumpetなど、Kontaktエンジンの他社音源をインストールする場合、NI製品とはライブラリの場所を分けたいこともあるだろう。そんなときはこの方法を取るのが良いと思う。
KOMPLETE7の場合(※古い情報です)
ライブラリに関しては別のHDDに入っていれば、引き継ぎが可能。ただし、Spectrasonics製品とは異なりアップデータのみではインストール作業はできない(KOMPLETE7で確認)。きちんと元のディスクからインストールした後、アップデータを当てること。
インストールした後間もなく、NI Service Centerが自動でアップデートされるようだ。
MASSIVE、FM8、ABSYNTH 5などは、起動したばかりだとプリセットが表示されない。オプションから「Rebuild Database」を選んで少し待つと、表示される。
XLN Audio (Addictive Drums)
※2017年12月4日 加筆修正
Addictive Drumsはオンラインインストーラーでなければインストールできない(2017年12月現在)。Webサーバーからデータをダウンロードしながらインストールが進んでいくため、新規インストールの場合かなり時間がかかる(ライブラリ込みだとたぶん30分~1時間くらい)。
ただし、再インストールの際など、HDDに既にライブラリがインストールされている場合は、インストール作業はもっと早く済む。インストール時にライブラリのパスを指定できるが(←画面右上の「Advanced」という項目)、その指定されたパスにライブラリのデータが既にインストールされている場合、ライブラリ部分のインストールは省略される。パスを指定すると、そのディレクトリのデータがスキャンされ、インストールが必要かどうか判断してくれるようだ。
Steinberg HALion Sonic
※古い情報です
HALion SonicもNI KOMPLETE同様、インストールディスクからインストールする必要あり。ライブラリ部分に関しては、"裏技"を使えばインストールの省略が可能。
その裏技について説明する。HALion Sonicではライブラリのパスを指定する設定項目がどこにもない。しかし、ライブラリのHDDを参照し、Contentフォルダの中のHALion Sonicの音色ファイルをHALion Sonic(スタンドアローン版)の画面にドラッグ&ドロップすれば、何故か認識に成功し、問題なく使うことができるようになる。
ちなみに、この裏技は、ディスクからHALion Sonicをインストール後、「アップデータを適用した後」でなければ使えない(1.6.3のアップデータで確認済み)。
なんとも不可思議な仕様となっているが、僕の環境では問題なく使うことができている。
Synthogy Ivory
※2017年12月4日 最新版の情報に加筆修正
こちらもSpectrasonics製品と同じように、すでに別SSDなどにライブラリがインストール済みの場合は、アップデータ(インストーラ)だけ実行すればよい。
- 「Ivory Win Update 2.5.0.8」などを実行。
- インストール時にライブラリのパスを指定する(「Ivory Items Library Location」という項目)。
- インストールを完了する。
これでOKだ。
なお、「Ivory Library Tool」というソフトも同時にインストールされる。それを使えば、後からライブラリのパスを変更することも可能だ。
※「Ivory Library Tool」の場所 → C:\Program Files (x86)\Synthogy\Ivory
SWAMエンジン (Sample Modeling The Saxophonesなど)
インストールは普通に行えばOK。ただしサンプルを別のHDDに置く場合、「Option > Resources Root Path」からディレクトリを指定する必要がある。その際、ライブラリのルートディレクトリを指定することに注意(深層のフォルダだとNG)。
例:「E:\Sample Modeling」
EastWest Symphonic Orchestra
このソフトも、すでに別HDDにライブラリがインストール済みの場合は、Playエンジンのインストーラだけ実行すればOKだ。
- Playエンジンだけインストールする。
- Playを立ち上げ、ブラウザからライブラリの適当なパッチを読み込んでみる。
- パスの指定をするようにアラートが出るので、指定する。
- 普通に使えるようになる。
おわりに
今回はインストールにつまずきやすいソフトシンセを中心に、インストール方法を紹介した。他にも何か気づいたことがあれば、今後も追記していく予定だ。
【DAW】OS再インストール時のメモ~その2:WindowsをDAW仕様にカスタマイズ
はじめに
前回の記事では、「OSをクリーンインストールするときは、事前にソフトシンセのアクティベーションを解除しましょう」という話をした。
今回はWindowsの環境設定をDAW向けに調整する方法について紹介する。WindowsはMacと違ってカスタマイズできる項目が多いため、快適な環境を作るためにはそれなりにエディットが必要となる。
あくまでいちユーザーの例にすぎないが、今回は僕自身が快適に感じるWindows7のカスタマイズ方法を紹介してみる。DAW仕様と銘打ってはいるが、普通にPCを使う場合でも、ほとんどの項目は設定したほうが快適になるはず。DAWユーザー以外の方も参考にしてみてほしい。
今回の記事はWindows7という旧世代のOSが基準になっているが、最新のWindows10でも応用できる箇所はあると思うので、適宜工夫していただきたい。
※内容に間違があっても責任は負いかねますので、情報の利用は自己責任で。
カスタマイズの方針について
- DAW向けのカスタマイズなので、DAWが安定動作することを最優先にしている。
- 画面表示については、なるべくPCへの負荷を減らしつつ、それなりに綺麗にする方向で(Windows 2000のようなクラシック表示にはしない)。
それではここから、Windowsのカスタマイズについて紹介していく。
タスクバーの設定
- タスクバーを右クリックし、プロパティ>タスクバーのデザイン>タスクバーのボタンを「結合しない」
ウィンドウの内容が表示されたほうが便利なので。そして、同じウィンドウから、
- 通知領域>カスタマイズ>タスクバーに常にすべてのアイコンと通知を表示する
右下のタスクトレイの表示項目の設定だ。全て表示させたほうがわかりやすいはず。
ウィンドウの色
これは自分の色の好みなので、参考までに。
デスクトップを右クリックし「個人設定」を開く。AeroテーマをWindows7に変更し、ウィンドウの色を「そら」に。
拡張子の表示
まず適当にウィンドウを開く(「コンピューター」など)。
- 「整理」メニューから、フォルダーオプション>表示>詳細設定と進み、「登録されている拡張子は表示しない」のチェックを外す。
デフォルトでは拡張子の表示がオフになっている。PC使用の基本事項だが、拡張子は必ず表示させておこう。
サウンド
48kHzで制作してる時に44.1kHzであるWindows効果音がなったりするとやっかい。これをオフにする。
- コントロールパネル>ハードウェアとサウンド>サウンド>「サウンド」タブからサウンド設定を「サウンドなし」にする。
- 「Windowsスタートアップのサウンドを再生する」のチェックを外す。
ついでに「再生」タブから再生デバイスを割り当てておくとよい。使用しているオーディオインターフェイスに割り当てればOK。
視覚オプションの設定
- 「コンピューター」を右クリック→プロパティと開く
- システムの詳細設定>詳細設定タブ>パフォーマンス>「視覚効果」タブと開く
- 「カスタム」にチェックし、次の6点にチェックを入れる
- アイコンの代わりに縮小版を表示する(画像を探すときに便利なので)
- ウィンドウとボタンに視覚スタイルを使用する(これがないとクラシック表示になってしまう)
- スクリーンフォントの縁を滑らかにする(文字を綺麗に表示するため)
- デスクトップコンポジションを有効にする(Aeroをオンにするかどうか)
- デスクトップのアイコン名に影をつける(これがないとファイル名の下が黒塗りになる)
- ドラッグ中にウィンドウの内容を表示する(利便性から)
視覚オプションについては、色々と試行錯誤した末、このように落ち着いた。
バックグランドサービスにする
DAWはサウンドカードにCPUリソースを割いたほうが安定するので、バックグランドサービスを優先する。
手順は次の通り。
- コンピューターを右クリックしてプロパティ>システム>システムの詳細設定を開く。
- 詳細設定タブ>「パフォーマンス」から設定をクリックする。
- 詳細設定タブ>「プロセッサのスケジュール」の「バックグラウンドサービス」にチェックを入れる。
電源オプションの設定
コントロールパネル>ハードウェアとサウンド>電源オプション と開く。このウィンドウから設定を行う。
- 電源プランを「高パフォーマンス」にする(大容量ピアノ音源等でプチノイズを防げる)。
- スリープ解除時のパスワード保護>「パスワードを必要としない」にチェック(いちいちパスワードを求められ、スリープ復帰が面倒くさくなるのを防ぐ)
- ディスプレイの電源を切る時間の指定>「ディスプレイの電源を切る」を「なし」に変更。
- そのまま、詳細な電源設定の変更から「ハードディスクの電源を切る」を0分(なし)にする。
スリープ状態自動解除の防止
デフォルトの設定ではスリープ状態にしても自動で復帰してしまう(たぶん、ルーターからLANケーブルを通してネットワークインターフェイスカードに信号がくるため)。マウスやキーボードをクリックしてふいにスリープが解除されるのも防ぎたい。
これを防ぐために、デバイスマネージャーから
- ネットワークアダプター
- マウス
- キーボード
の3点について、プロパティより「このデバイスで、コンピューターのスタンバイ状態を解除できるようにする」のチェックを外す。
自動更新を止める
コントロールパネル>システムとセキュリティ>Windows Update>設定の変更 から、「更新プログラムを確認するが、ダウンロードとインストールを行うかどうかは選択する」に設定。
リリース直後のWindows Updateを適用することで不安定になるのを避けるようにする(Microsoftも、不具合のあるパッチをリリースしてよく問題になっている)。リリース後数ヶ月立ったものは安定版である可能性が高いので、それらを選択してインストールする。
ページファイルを小さくする
仮想メモリのサイズはデフォルトではPCに搭載しているメモリと同じサイズになっているが、その分だけOSが肥大化しHDDを圧迫してしまう。メモリが豊富に搭載された現在のPCにおいては大きな仮想メモリは必要がないので、HDD容量を節約するために、仮想メモリのサイズを小さく設定する。
仮想メモリ(ページファイル)を確認する方法は次の通り。フォルダーオプション>表示>詳細設定と開き、
- 隠しファイル、隠しフォルダー、および隠しドライブを表示する にチェック
- 保護されたオペレーティングシステム ファイルを表示しない(推奨) のチェックを外す
こうすると、Cドライブ直下に「pagefile.sys」というサイズの大きいファイルの存在が確認できる。このファイルがOS肥大化の原因。これを小さくしたい。
その手順だが、
- コンピューターを右クリック>システム>システムの詳細設定>詳細設定タブ>パフォーマンス>詳細設定タブ>仮想メモリと開く。
- 「すべてのドライブのページングファイル~」のチェックを外し「カスタムサイズ」にチェック。初期サイズと最大サイズを物理メモリの1/8(8GB搭載なら1024)にして「設定」をクリック。
- 再起動する。
再起動後、再度Cドライブを覗いてみると、ページファイルが小さくなっていることがわかるはず。確認できた後は、上記フォルダーオプションの設定を元に戻しておこう。
余談だが、仮想メモリを完全に切ってしまうとアプリの挙動がおかしくなることがあるらしいので多少は仮想メモリを設定しておくのが望ましいと思う。
ハイバネーション(休止状態)の無効化
※OSに影響のある隠しファイルをいじることになるので、自己責任で。
休止状態とは、作業途中の内容をHDDに一時的に保存しておく機能。アプリの再起動無しに作業を再開できるため、人によっては便利かもしれないが、自分には一切必要ない。
休止状態を使うために、Windows7では「hiberfil.sys」というサイズの大きいファイルがCドライブ直下に生成される(上記「ページファイルを小さくする」の通りにフォルダオプションのチェックを行えば、ファイルの存在が確認できる)。そのサイズはメモリ搭載量と同じくらい。32GBメモリを積んでいればファイルサイズは32GB程度だ。
HDD容量の節約のために、休止状態はオフにするのが望ましい。その手順だが、
- スタート>アクセサリ>コマンドプロンプトを右クリックして「管理者として実行」。
- 「powercfg.exe /hibernate off」と入力し、Enterを押す。
これで「hiberfil.sys」は消える。
参考サイト
- DAW向けPC Guide & Topic(現在サイトは閉鎖。昔お世話になりました)
- pagefile.sysとhiberfil.sysを無効にする・削除する(「ぼくんちのTV別館」様)
今回はWindowsでDAWを使う際のカスタマイズ方法について紹介した。
【DAW】OS再インストール時のメモ~その1:アクティベーション解除
※2017年12月4日 一部項目を加筆修正
はじめに
先日PCのシステムドライブをSSDに換装し、DAW環境の再インストールを行った。
DAWやプラグイン一式をインストールするのは非常に手間がかかる。クリエイターにとってはあまり頻繁に行いたい作業ではないが、それゆえに、効率の良い環境構築方法が確立されていないのではないかと感じた。
僕自身、けっこう無駄な手順を踏んでしまったように感じているので、誰かの役に立ててもらえればと思い、OSクリーンインストール時の覚え書きを記事にしてみる。
DAW環境の構築方法について、3回に分けて記事を書いていく予定だ(データのバックアップやPCのセットアップなどの基本的な話題は割愛する)。
PCの初期化前にはアクティベーション解除を!
ソフトシンセやプラグインエフェクトによっては、何もせずにいきなりOSをクリーンインストールしてしまうと、アクティベーション回数を失ってしまう。
これを避けるため、OSのクリーンインストール前にはアクティベーションを解除しておく必要がある。
その必要性はソフトによって変わってくるので、把握するのが割と面倒。そこで、自分の調査と体験を元に、その詳細について書いていく。
※内容に間違があっても責任は負いかねますので、情報の利用は自己責任で。
アクティベーション解除が必要なソフト
Melodyne
アクティベーション解除が必要なソフトの筆頭格は、何とってもMelodyneだ。HDDの交換等の都合でOSをクリーンインストールするときは、必ず事前にアクティベーションを解除しよう。さもないと、アクティベーション回数が失われてしまう。
アクティベーション解除は、「アクティベートされているPC」でのみ行える。
アクティベーションの解除は、アクティベートされているコンピュータでしか操作できませんのでご注意ください。アクティベートされているコンピュータにアクセスできない場合、アクティベーションは失われます。
出典:インストールとアクティベーション(公式サイト)
公式サイトの記述を見る限り、もしPCが壊れた場合、事前にアクティベーション解除をしていないことになるので、アクティベーション回数を1回分失うことになる。極めて不親切なシステムだと思うが、仕様なので仕方ない。
ちなみにハードウェア構成に変更がない場合、OSのクリーンインストール前にアクティベーションを解除する必要はない。
ハードディスクの初期化やオペレーティングシステムの再インストールでは、まったく問題は生じません。 この場合、アクティベーションは失われません。
出典:インストールとアクティベーション(同上)
OSの入ったHDDをSSDに換装するような場合は、アクティベーション解除をしておくのが賢明だろう。よくわからない場合も、念のためアクティベーション解除しておくと安全だと思う。
1ユーザーあたりのアクティベーションは2つまで。
Sylenth1
Sylenth1もアクティベーション解除の必要あり(僕はうっかり忘れてしまった)。プラグイン画面上からアクティベーション解除が可能。
もしアクティベーション解除を忘れてしまった場合、後から公式サイト上のカスタマーエリアからアクティベーションの解除ができる(実際にお世話になってしまった)。しかし、それができるのは10回まで。OSクリーンインストール前にはアクティベーション解除を忘れずに。
1ユーザーあたりのアクティベーションは2つまで。
参考:License FAQ | LennarDigital(公式サイト)
Finale
ソフトウェア上からアクティベーション解除が可能。HDDの故障などで事前に解除できなかった場合、サポートに連絡するよう案内あり。
参考:ライセンス認証の解除(公式サイト)
1ユーザーあたりのアクティベーションは2つまで。
Fxpansion製品(BFDなど)
アクティベーションの解除自体ができないようだが、代わりの方法が使える。オーサライズファイル(「auth」という拡張子のファイル)をバックアップしておき、再インストール時にはそれを読み込めば問題ない(シリアルを入力する必要はあり)。
場所 → C:\Users\ユーザー名\AppData\Roaming\FXpansion
ハードウェア構成が変わると上手く行かない場合もあるらしいが、今回の僕のケースではシステムドライブの交換のみだったので、新規オーサライズを求められることはなかった(←確認済み)。
この「オーサライズファイルのバックアップ作戦」が上手く行かなかった場合は、再度オーサライズ作業を行う。オーサライズは累計3回まで可能だが、それを超えた場合、メールで再オーサライズの申請をする必要あり(下記URL参照)。
参考:オーサライズファイルのバックアップ方法(代理店サイト)
オーサライズ実行時に「ERROR6」のメッセージが表示される
(再オーサライズの申請方法:代理店)
Arturia製品
アクティベーションはArturia Software Centerというソフトで管理される。そこからディアクティベートが可能だ。
僕はうっかりアクティベーション解除を忘れてしまったのだが、ハードウェアの構成がそれほど変わっていなかったためか、アクティベーションの残り回数を失うことはなかった。
しかし、普通ならアクティベーション解除が必要。忘れずに。
XLN Audio製品
公式サイトのアカウント上でアクティベーション解除をすればOK。オンライン上でアクティベーションを管理する仕様なので、OSクリーンインストール後、別のPCからでもアクティベーション解除はできそう(未確認)。
しかし、OSクリーンインストール前にアクティベーション解除をしておくのが精神衛生上よいと思う。
Audio Modeling(SWAMエンジン)
※2018年3月31日 追記
Sample Modeling社とAudio Modeling社の間で和解が成立したと双方のWebサイトで発表されている。今後は心置きなく製品を使えそうだ。
※2017年12月4日 加筆修正(古い情報を含みます)
なんと、SWAMエンジンを作っている会社(Audio Modeling)が「非合法な行為をした」ため、元締めであるSample Modeling社がSWAMエンジンの音源を販売停止するという自体になってしまっている。SWAMエンジンの音源、つまりサックスやバイオリン等の新規販売は、今のところ中止のようだ(なんてこった)。
(参考)For those interested in purchasing SWAM-based instruments:
とはいえ、既存のユーザーはアクティベーションをして使わなければならない。幸か不幸か、最近再インストールをする羽目になってしまったので、その記録を書いておく。
- SWAMエンジンのサイトに行き、Audio Modelingのサイトに誘導される。
- アカウントを作る(サイトがめちゃくちゃ重い)。
- ログインすると、アカウント上でアクティベーションの管理が可能になる。
というわけで、オンライン上でアクティベーション解除ができるようになったようだ。アクティベーション回数の上限は今までと変わらず、2回となっている。
開発チームが分裂しているのが気がかりだが、アクティベーション解除に関しては、今までよりもやりやすくなった模様。
アクティベーション解除が不要なもの
Spectrasonics製品
特に何もしなくてよい。代理店のMedia Integrationのサイトにも、特記事項はなし。
僕自身ここの製品は長年愛用していて、オーサライズ手続きは何度も行っているが、アクティベーションについて気にしたことはない。
参考:Spectrasonics オーサライズ方法(代理店サイト)
Native Instruments製品
NI製品もアクティベーション解除の必要はない。公式サイトにも「ディアクティベートは不要」と記載あり。
ライセンス契約上のアクティベート可能台数を超える場合、インストール済みの製品をディアクティベートする必要はありませんが、既にインストールされているコンピュータから製品をアンインストールしていただく必要がございます。
Sample Modeling製品(Kontaktエンジン)
SWAMエンジン以外のものはKONTAKTベースなので、NIのアクティベーションシステムが利用される(Native Access上からも確認できる)。
※以下古い情報です
SWAMエンジンについては、今回の僕の場合では特に何もしなくても大丈夫だったが、ハードウェア構成に大きな変更があった場合、新しくアクティベーションが必要になるようだ。アクティベーション回数が上限に達した場合は、メールでアクティベーション解除の申請をすればよい。
However, major hardware upgrades, or installation of the instrument on a new computer require a new activation. In this case, deactivation of a previous license is required in order to free the license for a new installation. This is easily accomplished by sending us a deactivation request per e-mail.
出典:Sample Modeling | SWAM platform(公式サイト:末尾「License Policy」)
SWAMエンジンの場合、ライセンスは1ユーザーに2つまで与えられる。同時に2つ使ってもいいし、将来の予備として残すのも良い(と書いてある)。
IK Multimedia製品(AmpliTubeなど)
ユーザーエリアから残りのオーサライズ回数を確認できる。しかし、アクティベーションの解除はそもそもできないようだ。上限に達した場合、テクニカル・サポートに連絡することでオーサライズ回数の追加が可能との情報あり(参考サイトより)。
合計10回までオーサライズが可能なので、使い切る可能性が少ないと判断しての仕様なのかも。
参考:AmpLitubeのauthorizationsについて(Yahoo!知恵袋)
FabFilter
オーサライズ形式ではないので、ライセンスコードを読み込ませれば普通に使える。
ドングル管理のもの(=アクティベーション解除不要)
ドングル管理のソフトは当然アクティベーション解除は不要。ライセンスがドングル管理となっているソフトのメーカー一覧をまとめておく。
USBメモリ
- Waves
- Plugin-Alliance
eLicenser
- Vienna Symphonic Library
- Steinberg
iLok
- Slate Digital
- Synthogy(Ivory)
- Softube
- Lexicon
- Sonnox
- EastWest
おわりに
僕自身の体験を元に記事を書いているので、間違いが含まれている可能性もある。必ずご自身で確認していただきつつ、アクティベーションの管理は確実に行ってください。
ポップスに最適なストリングス音源「Vienna Chamber Strings」を徹底解剖(デモ音源あり)
はじめに
「Vienna Chamber Strings」は、Vienna Symphonic Library(以下VSL)より発売されている小編成のストリングス音源だ。
VSLはオーケストラ音源メーカーの先駆者的な存在。これまでに数多くのオーケストラ楽器の音源をリリースしてきている。プロの作曲家・編曲家でViennaを愛用している人も多い。
このChamber Stringsは、発売されたのが2006年3月(代理店サイトより)と古い音源だが、2017年現在でも、後発のストリングス音源に負けない品質を誇っている。特にポップス向けの生っぽいストリングスを探す場合、今でも間違いなく上位候補に食い込んでくるだろう。
今回はこの音源について紹介していく。簡単なデモ音源も用意したので、参考にしてみてほしい。
- はじめに
- 人数感がポップス向き
- Viennaエンジンが圧倒的に優秀
- 残響成分が含まれていない
- 音色のキャラクターは割と落ち着いている
- Chamber Stringsを活用するためのTips
- SSDの使用を推奨
- その他の覚え書き
デモ音源
ダンス系の歌ものポップスを想定したトラックです。Vienna Chamber Strings 1(Standard + Extended)をVienna Instruments Proで鳴らしています。
人数感がポップス向き
ポップスの音楽に生のストリングスを入れる場合、「6422」という編成が多い。
- 1stヴァイオリン:6人
- 2ndヴァイオリン:4人
- ヴィオラ:2人
- チェロ:2人
内訳は上記の通りだ。音の立ち上がりや、曲にふさわしい人数感を考えると、6422の編成はサウンド的に汎用性が高いのだ。
※ポップスにはエレキベースがいるので、普通はコントラバスは省く。
Vienna Chamber Stringsでは、各楽器の人数は次の通り。
- ヴァイオリン:6人
- ヴィオラ:4人
- チェロ:3人
- (コントラバス:2人)
そのため編成は「6643」となる。6422の編成に比較的近い。
2ndヴァイオリンは別途収録されていないので、ヴァイオリンのトラックを2個立ち上げて使おう。1stと2ndでユニゾンさせるときは裏技を使う(後述)。
Viennaエンジンが圧倒的に優秀
必要なパッチだけを読み込めば済む
例えば、サステインとピチカートとトレモロしか使わない人ならば、3つのパッチだけをマトリックス上にロードしてプリセットを作れば良い。不要なパッチをロードしなくてよいので、動作も軽快になる。
また、それらのパッチはキースイッチで切り替えが可能。トラックを分けなくても曲中で奏法を切り替えることができる。キースイッチも好きな高さの鍵盤にアサインすることができ、自由度が高い。
他社のストリングス音源だとこうは行かない。
EastWestの音源は、キースイッチが使えるプリセットには不要な音色も入っていたりする。またPlayエンジンはロードが遅く安定感に欠けている(最新Verでは解消されたらしいが)。
LA Scoring StringsはKONTAKTベースのためキースイッチの設定が少し面倒。またKONTAKTという汎用エンジンを使っているため、パッチごとの設定をするのには操作の手数が多くなる印象だ。
そんな中、Viennaエンジンは圧倒的な使い勝手の良さを誇っている。安定感、ロード速度、GUIの見やすさ、どれを取っても頭一つ抜けているのは、専用エンジンの賜物といえるだろう。
ヒューマナイズ機能が優秀(VIProのみ)
Vienna Instruments Pro(VIPro)という別売のソフトを使うことで、ヒューマナイズ機能を有効にすることができる。これが非常に優秀。
ヒューマナイズ機能でできるのは次の2点。
- 音の立ち上がりのピッチをランダムに揺らすことができる
- 音の立ち上がりをランダムに遅らせることができる
特に1点目の「ピッチ揺らし」が素晴らしい。バイオリン等の弦楽器はギターのようにフレットがないため、上手な奏者でも機械のような正確なピッチは意外と出ないものだ。Vienna特有の落ち着いた音色のキャラクターを緩和する意味でも、このヒューマナイズ機能は必須といえるだろう。
1パートあたりの「ピッチ揺れ」がもたらす効果はわずかでも、ストリングスセクションなら4パート分、それぞれのピッチが揺れることになる。その効果は想像以上に大きく、音の広がり方は明らかに変わってくる。
Viennaの音源を導入する際は、ぜひVienna Instruments Proも合わせて購入することをオススメする。
サンプルのレイヤーが自由にできる
通常のViennaエンジンならば2個、VIProならば4つのサンプルを重ねられる。後述するが、ポップスでは2つのサンプルを重ねたい局面が出てくるので、この機能も欠かせない。
残響成分が含まれていない
ポップスにストリングス音源を入れる場合、曲によってベストな残響の量は変わってくる。そこで、作りたい音像に合わせて残響の量を調節できるよう、音源自体はドライな(=残響成分が含まれていない)音が望ましいのだ。
ドライな音源に、後からリバーブを掛ける。それが今までのポップス制作における共通認識だった。ドライな音源の筆頭格であるViennaのライブラリが、ポップスで使われることが多かったのも必然かもしれない。
ただし、リアルなストリングスにするには良いリバーブが必要になってくる。コンボリューションリバーブならAltiverb、アルゴリズミックリバーブなら2CAudio B2やLexicon PCM Reverbなどの高品質なリバーブを使うのが理想だ。
Vienna社自身も、MIR Proというオーケストラ向けのコンボリューションリバーブをリリースしているほどだ。音源がドライであるほど、リバーブの重要度は高くなるのは間違いない。
ただし今後のViennaは……
とはいえ結局、リバーブを後がけしたところで実際のホールで録音した残響にはかなわない。ストリングスがリアルに聴こえるかどうかは、残響成分に依るところも大きいのだ。
そういった理由からかは不明だが、VSL社も最近は、「オンマイクの音」と「別ポジションのマイクの音」をユーザーが好きな割合でブレンドできるような音源の開発に力を入れている。
それがSynchronシリーズだ。Synchron Percussionはすでにリリースされているし、Synchron Stringsのリリースも先日発表された。従来のViennaの音源は、とにかくドライな音で収録されてきたが、今後は方針が変わっていくのかもしれない。
音色のキャラクターは割と落ち着いている
Viennaのストリングスは全般的に音色の表情が落ち着いている。Chamber Stringsも例に漏れずそういった傾向がある。そのため、打ち込みを工夫しないと無表情なトラックになりやすい。MIDI CC11のExpressionなどを駆使して、上手く強弱をつけてやる必要が出てくる。
元のサンプルが表情豊かで、ベタ打ちでもそれなりに鳴ってくれるEastWest社の音源とは対象的かもしれない。
ただ、どんなストリングス音源であってもエクスプレッションを描くかどうかでリアルさは大きく変わってくる。生っぽいストリングスを目指すなら、労力に対する見返りが一番大きいのはViennaだろう。Viennaエンジンの使い勝手が良いぶん、他の音源より作業がはかどりやすいはずだ。
Chamber Stringsを活用するためのTips
Vienna Chamber Stringsを活用するためのテクニックについて紹介する。
音にアタック感をつける方法
この音源に限ったことではないが、多くのストリングス音源はポップスの曲を演奏するには音の立ち上がりが遅く、速いパッセージが上手く決まらないことが多い。
そこで、よく知られたテクニックがある。
- サステインのサンプルに、スタッカートのサンプルを重ねる
これだけだ。Viennaエンジンは幸い、1つのセル上で2つ(※VIProなら4つ)のパッチを鳴らすことが可能。適切なバランスで鳴るよう、音量バランスを上手く調整すると良いだろう。
また、ストリングスという音色はそもそも音の立ち上がりが遅いものなので、トラックディレイで発音を早めるのも有効だ。
参考:【Tips】Cubaseの実践的な使い方を15個紹介(→13. トラックディレイ)
1st・2ndヴァイオリンでユニゾンする方法
前述の通り、1stヴァイオリンと2ndヴァイオリンでユニゾンをするには工夫が必要だ。何も考えずに2トラックで同じフレーズを演奏してしまうと、同じサンプルが鳴ってしまい、2本鳴っているようには聴こえないからだ。
そこで裏技を使う。手順は次の通り。2ndヴァイオリンについて下記の処理を行う。
- ユニゾンしたい箇所で、ピッチベントを使って半音だけ上げる
- MIDIノートを半音下で鳴らす
これで1stヴァイオリンとのユニゾンが可能だ。Chamber Stringsは半音ごとにサンプリングがされているので、ピッチベンドは半音だけで良い。
この方法は昔海外のフォーラムで見つけたものだ(URLは忘れてしまった)。
SSDの使用を推奨
音源ライブラリのデータは、OSとは異なるSSDに置いておくのがオススメ。複数の奏法をまとめてロードする関係上、容量も食うので、SSDを使ったほうがパフォーマンスが上がる。
Vienna Instrumentsをインストールするとき、「Directory Manager」というソフトも一緒にインストールされる。このツールでライブラリの箇所を自由に指定できる。
その他の覚え書き
駆け上がりについて
駆け上がりのサンプルは収録されていないので、レガートパッチを使おう(デモ音源でもそのようにしている)。
Extendedについて
Extendedを買うことで追加の奏法サンプルが使えるようになる。詳細は代理店のサイトを参照してほしい。
Extendedにしか含まれていないサンプルの例としては、サステインの「fA」というバージョンのものがある。これは通常のサステインのサンプルの頭を切ってアタックを早めたような音だ。速いフレーズを鳴らす上で便利なので、個人的には必須。
とはいえポップスで使うだけなら、ほとんどのサンプルは必要ない。必要に応じて買い足すのが良いだろう。
1と2の違い
「Chamber Strings 1」が通常の音源。「Chamber Strings 2」は弱音器付きの音が収録されている音源だ。ポップス用途なら1だけ買えばよい。
優れた転調テクニックが使われている12曲を紹介する
曲づくりをしているとき、曲の中で転調を使うことができれば、作曲の可能性は大いに広がる。「美味しいメロディのパターンはすでに出尽くしている」という説もある中、他の曲と差別化を図るための手法としては、これほど効果的なテクニックも無いだろう。
反面、上手く転調させなければリスナーに違和感を与えてしまうこともある。作曲に慣れていない人が作った曲で、不自然な転調が発生しているのを耳にすることもある。この問題を解決するには、音楽理論を習得したり、ハーモニーのセンスを磨いたりと、自身の音楽的なスキルを高めていくしかない。
一番効果的なのは、既存の曲の転調方法を分析して学んで、自身の血肉とすることだ。理論書を読みあさるよりも、転調が使われている名曲を片っ端からコピーしていったほうが得られるものは大きい。
今日は日本のポップス・ロック系の音楽から、秀逸な転調が行われている作品を12曲紹介する。どれも多かれ少なかれヒットしており、音楽的にも評価されている。
転調する前後のコード譜も合わせて用意したので、ぜひコード進行をギターやピアノで演奏してみて欲しい。そして転調の瞬間のハーモニーを感じてみて欲しい。
- 曲のタイトルをクリックするとYouTubeが開きます(一部のみ)。
- コードは耳コピで採譜しています。
- 1. Get Wild/TM Network
- 2. 名もなき詩/Mr.Children
- 3. 奏/スキマスイッチ
- 4. ポニーテールとシュシュ/AKB48
- 5. 制服のマネキン/乃木坂46
- 6. Hello, Again ~昔からある場所~/My Little Lover
- 7. Pieces/L'Arc~en~Ciel
- 8. ボクノート/スキマスイッチ
- 9. 行くぜっ!怪盗少女/ももいろクローバー
- 10. プラチナ/坂本真綾
- 11. 創聖のアクエリオン/AKINO from bless4
- 12. ROCKET DIVE/hide with Spread Beaver
1. Get Wild/TM Network
[B](7小節目~)(Key = Bm)
| GM7 | F#m7 | B(no 3rd) | |
[C](Key = G#m)
| G#m F# E | F# B |~
Bメロ終わりの4小節から、上記のような進行になっている。AメロとBメロはKey = Bm、サビはKey = G#mとなっている。すなわち「同主調(Key = B)の平行調」に転調することになる。この曲のように短三度の関係にある調に転調するパターンは頻出だ。
サビ直前の2小節は本来Bmとなるところだが、3度を抜くことで、メジャーともマイナーとも付かない雰囲気を出している。それが2つのキーに共通するコードとなり、スムーズな転調が実現しているのだ。
2. 名もなき詩/Mr.Children
[E](5小節目~)(Key = G)
| Am7 | Bm7 | C | D | C/D | Db/Eb |
[C] (Key = Ab)
| Ab | Cm7 |~
楽曲そのものが見事だが、転調も優れている曲だ。
曲の後半、間奏の後のEメロでは、細かいフレーズを歌った後、Bメロのフレーズをオクターブ上で歌う形で再登場させている。この時点でかなりの高揚感を感じることができるが、さらにダメ押しの転調技を繰り出してくる。
サビのフレーズを歌い出した……と思いきや歌うのを止め、その刹那、半音上に転調する。そしてサビが始まる。このようにしてリスナーに強烈なカタルシスを与えているのだ。
Eメロの後半からのコード進行は上記のようになっている。ドミナントの代理コードのC/Dを挟んでから転調後のドミナント代理であるDb/Ebへと、半音上に進行する。これにより、ドミナント感が和らぎ、スムーズな転調が実現している。
転調テクニックとしてはオーソドックスな手法だが、ここまで効果的に使われているケースは他に類を見ないだろう。「楽曲をドラマチックに彩るための転調」という意味では、お手本のような素晴らしい転調テクニックの使い方だ。
3. 奏/スキマスイッチ
[C] (Key = Bb → Key = Db)
| EbM7(9) | F | Dm7 D7 | Gm7 |
| GbM7 Ab | Fm7 Bbm7 |~
Cメロ(※2サビ後の部分)からのコード進行は、上記のようになっている。それまでKey = Bbで進行していたが、5小節目からKey = Dbに転調する。その後、転調したままラストのサビへと突入していく。
短三度上に転調しているので違和感もなくスムーズにつながっている。ふたつのキーの共通音であるF音が転調前後のメロディで多く使われているのも、転調がスムーズな要因の一つだろう。転調を上手く行うためには、メロディとの兼ね合いも大事なことがわかる一曲。
4. ポニーテールとシュシュ/AKB48
[B](Key = A)
| C#m7 | F#m7 | C#m7 | F#m7 |
| B7(9) | | C#7 | |
[C](Key = F#)
| D#m7 | B |~
Bメロからのコード進行は上記のようになっている。Key = AからKey = F#に転調している(※厳密にはF#の平行調のD#m)。この曲は、短三度下に転調するパターンだ。
注目すべき点は、Bメロ7小節目からの歌メロ。7小節目ではまだ転調するかどうかはわからない。しかし、8小節目では歌メロにD#音とF音が使われている。これらはスケール内の音ではなく、転調後のキーのスケールに含まれる音だ。この2音がメロディに登場することで転調を予感させる仕掛けとなっているのだ。
これらの音使いは、全て同一の「C#7」というコードが鳴っている最中に行われている。そのため、背景のコード感が変わることなく、スムーズな転調が実現している。
歌メロのスケールを変えることで、転調のきっかけを生み出している。非常に高度な転調テクニックといえるだろう。
5. 制服のマネキン/乃木坂46
[B] (Key = Dm)
| BbM7 | C/Bb | Am7 | Dm7(9) Dm7(9)/C |
| Bm7-5 | BbM7 | C | C7-13 C7 |
[C] (Key = Fm)
| DbM7 Eb | Fm7 Cm7 |~
Bメロからのコード進行は上記の通り。Key = DmからKey = Fmへと転調している。短三度上へ転調するパターンだ。
C7のコードをきっかけに転調が行われている。このコードは転調前のキーにとってはV7だが、転調後のキーにとってはIII7。そのため、転調後のIV△7であるDbM7というコードにスムーズにつながるのだ。
もう一つ面白いのがBメロ8小節目のメロディ。転調前のスケールには出てこないAbの音が歌メロに使われている。これはC7にとってはb13thというオルタードテンションになっているので違和感なく使える音だが、それだけではなく転調後のスケールに含まれる音でもある。そのため転調がよりスムーズに実現しているのだ。
この「転調後のスケールに含まれる音をメロディに使うことで、転調をスムーズに行う」という技は、前述の「ポニーテールとシュシュ」でも出てきた。現代のJ-POP作曲家のクレバーさを思い知らされる一曲だ。
6. Hello, Again ~昔からある場所~/My Little Lover
[B] (Key = E)
| A A/B | G#m C#m | A G#7 | C#m Bm7|
| A A/B | G#m C#m | F#m7 | F#m7/B |
[C] (Key = G)
| C D | G D/F# |~
Bメロからのコード進行は上記の通り。Key = EからKey = Gに転調している。短三度上へ転調するパターンだ。
F#m7/Bをきっかけに転調が行われているが、これはB7の代理コードと考えればよい。転調前のキーにとってはV7、転調後のキーにとってはIII7となるコードだ。
この曲で面白いのは、3小節目・8小節目の歌メロの音使いだ。まず3小節目の4拍目でG音が出てくる。これはスケール外の音。G#7というコードにとっては非和声音なので、すぐにG#音に解決する。その後8小節目の4拍目にもG音が出てくる。その直後に転調が起こる。この瞬間、G音は転調後のキーのスケールから持ってきた音だということがリスナーに分かるカラクリとなっているのだ。
「転調する直前に、転調後のスケールに含まれる音を登場させる」という技は、「ポニーテールとシュシュ」や「制服のマネキン」でも出てきた。この曲でも同じ手法が用いられているが、転調する直前だけではなく、さらにそれよりも前でも転調後のキーのスケール音を登場させているのがポイントだ。
言うならば、「転調の伏線を張り、それを回収している」といったところだろう。リスナーの潜在意識に訴えかけるような、巧妙な転調テクニックだ。
7. Pieces/L'Arc~en~Ciel
[B] (Key = A)
| D | C#m | Bm | A |
| D | C#m | Bm | Esus4 E Esus4 E |
[C] (Key = C)
| FM7 | G | Em7 | Am |~
Bメロからのコード進行は上記の通り。Key = AからKey = Cへと、短三度上へ転調している。ふたつのキーで共通して使えるEというコードをきっかけに転調が行われている。「制服のマネキン」や「Hello, Again」と同じパターンの転調方法だ。
この曲のメロディにも「転調の伏線」的な音使いが登場する。Bメロの6小節目では歌メロにさりげなくG音が出てくる。これは転調後のキーのスケールに含まれる音だ。キーが変わったことを感じさせないほどの、きわめて自然な転調となっている。
Clicked Singles Best 13 / L’Arc~en~Ciel
8. ボクノート/スキマスイッチ
[B] (7小節目~)(Key = A)
| DM7(9) B7/D# | Esus4 E Cm7/F F7/A |
[C] (Key = Bb)
| Bb Dm7 |~
イントロからKey= Aで進行していく。1番Bメロの7小節目からは、上記のようなコード進行になっている。
サビ直前でツーファイブを挟んで、Key = Bbに転調している。サビだけ雰囲気を変えるために転調させるパターン……と思いきや、なんとそれ以降Key = Aに戻ることなくKey = Bbのまま進んでいく。
つまり2番のAメロとBメロは、1番の半音上のキー(Bb)で演奏していることになる。言われなければ気づかない人も多いかもしれない。
余談だが、1B、2Bともに、終わりの1小節のストリングスのラインは同じ音型となっている。こういったさり気ないアレンジ面での工夫も、転調が自然に演出されている要因の一つだろう。
9. 行くぜっ!怪盗少女/ももいろクローバー
[B] (5小節目~)(Key = Am)
| Dm7 G | C FM7 | Bm7-5 | E7 | |
[C] (Key = Ebm)
| Ebm7 | Abm7 | Db7 | Gb Db/F |~
Bメロの5小節目からのコード進行は上記の通り。Key = AmからKey = Ebmへと、増四度上へ転調している。
増四度上という遠縁のキーへの転調ではあるが、E7がEbm7に対するドミナント7thコードになっている(半音上から解決するパターン)ため比較的自然につながっている。Bメロ8小節目のメロディに、転調後のキーのスケール音に含まれるF#音が一瞬出てくるのもポイント。
増四度の転調でリスナーに意外性を与えつつも、理論的な部分では破綻していないという、大胆かつ巧妙な転調といえる。
なお、サビの後は再びKey = Amに戻る。そこはDb7 → Amという進行なので、元のキーに戻るときは何のクッションも挟まずに転調していることになる。しかしながら、この後のセクションはバックトラックがリフ的な演奏で、ボーカルはラップ調。そのため突然転調の不自然さも緩和されているのだ。この「転調を不自然に感じさせないような楽曲構成」もまた見事な部分といえるだろう。
10. プラチナ/坂本真綾
[B] (Key = D)
| Bm7 | GM7 | A B| C#m | G#m B C#|
| D#m7 | C#m7 | C#m7/F# C7(9)-5|
[C] (Key = F#)
| BM7(9) |~
Bメロからのコード進行は上記の通り。大きく見ると、Key = DからKey = F#へと、長3度上へ転調していることになる。
Aメロから部分転調的な仕掛けがたくさん出てくるが、分かりやすいのがこのBメロの部分だろう。IV→V→VImというケーデンスをつなげる形でキーが1音ずつ上がっていく(※Bm → C#m → D#mとキーが変化する)。その際の歌メロは似たような音型になっており、コードの3度を通っているので転調した感じも分かりやすい。
楽曲全体に部分転調がふんだんに盛り込まれているのもあり、他の曲のシンプルな転調とは一線を画している印象。菅野よう子氏の才能を強く感じさせる、非常に独自性のある一曲だ。
11. 創聖のアクエリオン/AKINO from bless4
[B] (9小節目~)(Key = Bm)
| GM7 | | Dadd9/F# | Bm7 |
| Bm7/E | Am7/D | Gm7/C | |
| Em7/A | F#m7/B |
[C] (Key = C#m)
| C#m G#m7 | AM7 G#m7 |~
Bメロ9小節目からのコード進行は上記の通り。Key = BmからKey = C#mへと、1音上へ転調している。
この曲のポイントは、「Dm7/G型」のコードを転調のきっかけとしていることだ。このコードはV7の代理コードとして使われることが多いが、ドミナント感を和らげて、調性をぼかすことできるのが特徴。また、同じ型のまま平行移動させて使ったりしても不自然になりにくい(※フュージョン系の音楽でよく出てくる)。
Bメロ13小節目のBm7/Eのところから、「Dm7/G型」コードの連続で調性感をあいまいにしつつ、目的のキー(C#m)に着地させるようなコード展開になっている。
Lost in Time / AKINO from bless4
12. ROCKET DIVE/hide with Spread Beaver
[B] (Key = D)
| A | | Bm | |
| C | | D | B |
[C] (Key = E)
| E | B |~
ギターソロの後からのコード進行は上記の通り。Key = DからKey = Eへと、1音上へ転調している。
ギターソロの後はBメロの部分の繰り返しだが、途中から少し変形していき、そのまま転調したサビへと突入していく。Cというコードの部分からキーがEに変わっていると解釈してもよいだろう。C、D、Bというコードは、それぞれ転調後のキーにとってはVIb、VIIb、Vというコードになる。
ここで見事なのは、転調に向けて変化していく歌のメロディだ。5小節目からの部分では、Bメロ頭のフレーズと同じ音型のフレーズが、コードに合わせる形で変化して歌われている。コードの変化とメロディの変化が渾然一体となって、転調がドラマチックに演出されている。楽曲に導かれるようにして生まれた転調からは、高い音楽センスを感じさせられる。
【FF名曲】ファイナルファンタジーの音楽でオススメの50曲を紹介する
日本を代表するRPG、ファイナルファンタジー(FF)。FFシリーズはゲーム中のBGMの人気も高い。そこで今回は、FF1~FF15の中で、優れた音楽を50曲厳選した。
※オンラインゲームのFF11とFF14は除外
個人的な好みも大いに含まれるが、FFシリーズの音楽を探すための参考にして欲しい。なお、ストーリーのネタバレとなるような記述は極力避けている。
※曲のタイトルをクリックすると、YouTubeが開きます。
FF1
プレリュード
ファイナルファンタジーと言えばこの曲。流れるようなコードトーンのアルペジオで構成されているのが特徴。
オープニング・テーマ
初期のFFシリーズではよく流れていたテーマ曲。最近のFFでも、しばしエンディング中などに流れることもある。
FF2
チョコボのテーマ
チョコボ初登場!シリーズを通して使われている、FFでも有名な一曲。
FF3
悠久の風
FF3のフィールド曲。勇壮さや冒険への期待感を感じさせる、RPGらしい曲調だ。FF3を代表する一曲だろう。
FF4
バトル2
ボス戦で流れる戦闘曲。緊迫感や勇壮さを感じさせる、RPGらしい一曲だ。
某有名ゲームキャラRPGの、ゲーム中に出てくるFFパロディでも、やはりこの曲が戦闘曲として使われていた。
FFの戦闘曲では最も有名な曲のひとつだろう。
少女リディア
のどかで美しく、優しい旋律が印象的。FF4でも有数の名曲だ。
FF5
ビッグブリッヂの死闘
FFシリーズの音楽でも有名な一曲。イントロのオルガンのsus4的な高速アルペジオが最高にかっこいい。
FF6
決戦
ボス戦で流れる、緊張感と疾走感のある一曲。The Black Magesでもカバーされている。
※The Black Mages:スクウェア社員で結成した、FFの曲をHR/HMアレンジして演奏するバンドのこと。CDもリリースしている。
妖星乱舞
プログレッシブ・ロック的な展開がすごい、FFでも一番の大曲だ。4つの楽章に分かれており、曲の長さは17分にも及ぶ。変拍子が出てくる11分過ぎのところからが非常にカッコイイ。
The Black Magesでもカバーされている。
FF7
更に闘う者たち
3連系リズムのロック曲。Deep Purpleを思わせるようなハモンドオルガンがカッコイイ。
The Black Magesでもカバーされているが、そちらもクオリティが高いのでオススメだ。
エアリスのテーマ
シンプルかつ印象的な一曲。ピアノの旋律が優美さや寂しさを感じさせる。キャラクター固有のテーマ曲としては、最も有名な曲のひとつだろう。
J-E-N-O-V-A
ジェノバのイメージによく合った、疾走感と緊迫感のある印象的な曲。The Black Magesでもカバーされている。
片翼の天使
色々とネタにされることも多いが、当時では珍しいボイスサンプリングを取り入れたりと、革新的な曲。
なお、映像作品「FF7AC」では、「再臨:片翼の天使~Advent:One-Winged Angel~」というアレンジバージョンが流れる。こちらは本格的なオーケストラに加え、The Black Mages的なHR/HM系のギターが取り入れられたサウンドになっており、非常に豪華な曲になっている。こちらもオススメだ。
FINAL FANTASY VII Original Soundtrack
FF8
FF8の音楽は、シリーズでも屈指の完成度を誇ると僕は感じている。作品全体を覆うややダークな雰囲気が、音楽でも上手く表現されている。
Balam Garden
バラムガーデンで流れる曲。シンプルで安心感がありつつも、独特の雰囲気を持った一曲。
音楽理論的には、リディアン・スケールが使われているのがポイント。これにより独特の不思議な雰囲気が生まれている。バラムガーデンの雰囲気にマッチしたサウンドと言えるだろう。
Breezy
バラムで流れる。ガットギターのシンプルな曲だ。ゆったりとしたアルペジオがのどかで心地よい。
この曲の良いところは、実際に本物のギターで演奏できるような音使いがされているところだ。ギターを想定して曲が作られているあたりに、植松氏のこだわりを感じる。ずっとアルペジオ奏法なので耳コピもしやすい。ギターが弾ける人はぜひ演奏してみよう。
The man with the Machine Gun
戦闘曲のうちの一つだ。4つ打ちのリズムに乗せたシンセのリフが印象的な、テクノ風楽曲。疾走感がありクールな一曲。
The Black Magesでもカバーされている。
Fisherman's Horizon
フィッシャーマンズ・ホライズンという街で流れる曲。FFシリーズでも屈指の名曲だろう。ずっと聴いていたくなる、美しく牧歌的な一曲だ。印象的なメロディラインに凝ったコード進行は、まさに植松節といったところか。
Julia
FF8の主題歌である「Eyes On Me」のピアノアレンジバージョンだ。曲が流れるシーンとそのストーリーの背景がとても感動的なので、個人的にはこちらを推したい。
Ride on
飛空艇で流れる曲。イントロの木管のハモりが小気味良い、明るい曲だ。
FINAL FANTASY VIII Original Soundtrack
FF9
いつか帰るところ
タイトル画面で流れるリコーダーの曲。リコーダー数本のシンプルな編成にもかかわらず、非常に印象的な一曲だ。植松氏の作曲能力の偉大さを思い知らされる。
Vamo' Alla Flamenco
6/8拍子のフラメンコ曲。ポップにデフォルメされたメロディと曲調が、FF9のキャラのイメージとよく合っている。
ハンターチャンス
ゲーム中のあるイベント時期にしか流れないが、緊迫感と勇壮さを持つ、非常に印象に残る一曲。
The Black Magesでもカバーされている。
ローズ・オブ・メイ
6/8拍子のリズムで、流麗な旋律が印象的なピアノ曲。美しいメロディの中にも、哀愁や気高さのようなものが感じられるのが特徴的だ。ベアトリクスの登場シーンでよく流れる。彼女のキャラクター性がよく表現された一曲だ。
FF9屈指の名曲といっても過言ではないだろう。
Melodies of Life
エンディングテーマとなっているボーカル曲。90年代風アレンジの王道バラード曲だ。ストーリーとも相まって、非常に感動的な一曲となっている。
FINAL FANTASY IX Original Soundtrack
FF10
ザナルカンドにて
タイトル画面で流れる曲。FF10という作品を象徴するような、とても印象的なピアノ曲。FFシリーズ屈指の名曲だろう。
浄罪の路
切なくダークな旋律が印象的なピアノ曲。
いつか終わる夢
とある遺跡で流れる曲。FF10主題歌である「素敵だね」のアレンジバージョンとなっている。シンセのノイズを使ったSEがファンタジックで印象的だ。
???バトル
曲タイトルがストーリーのネタバレなので伏せている(そのためサントラ発売前に一部で批判されていた)。4つ打ち+シンセサウンドという、テクノっぽい一曲。オルガンのアルペジオが植松氏っぽさを感じさせる。
The Black Magesでもカバーされている。
FINAL FANTASY X Original Soundtrack
FF10-2
久遠~光と波の記憶~
流麗なピアノのアルペジオが心地よい一曲だ。美しく幻想的な曲調になっている。
FF12
安息の時
美しいハープのアルペジオとフルート、ストリングスが中心の幻想的な一曲。FF12でも有数の名曲だろう。
パンネロのテーマ
木管楽器とストリングスが中心の、朗らかで透明感のある一曲。キャラクターの雰囲気によく似合っている。
FF13
発売前の期待が大きかった分、ゲーム内容には賛否両論あるが、音楽ではとにかく高い評価を得ているのがFF13。「閃光」はFFシリーズを通しても屈指の名曲だ。
ブレイズエッジ
ボス戦で流れる曲。雄大なストリングスや管楽器が印象的なオーケストラ曲。緊迫感と躍動感を持った、美しい一曲だ。
閃光
通常戦闘曲。FF13でも抜群の人気を誇る一曲だ。疾走感あふれるリズムの上で、壮大で迫力のあるオーケストラやエッジのあるディストーションギターが躍動する。サビのバイオリンのメロディが非常にキャッチーで印象的。FFシリーズでも屈指の名曲だろう。
サンレス水郷
「サンレス水郷」という地域で流れる曲。一昔前に流行した、キラキラしたハウス風の曲調だ。2コーラス目から女性ボーカルが入ってくる。
ちなみに、サウンドが特徴的なので気づきにくいかもしれないが、「FINAL FANTASY XIII ~誓い~」(タイトル画面の曲)のアレンジバージョンとなっている。
パルスdeチョコボ
昨今のチョコボ曲のアレンジでは、個人的に断トツでお気に入りの一曲。軽快なブラスが印象的なファンク系のアレンジになっている。4リズム(ドラム、ギター、ベース、ピアノ)のグルーヴも素晴らしい。
生演奏で、非常に躍動感あふれる一曲となっている。
ヴァニラのテーマ
優しいピアノの演奏が心地よい一曲。
ヤシャス山
「ヤシャス山」という地域で流れる曲。ボサノバ風のアレンジで、ガットギターの演奏が気持ち良い一曲。
ファイナルファンタジーXIII オリジナル・サウンドトラック
FF13-2
ゲームとしては賛否両論あるFF13-2だが、音楽はFFシリーズでも一二を争うクオリティだと僕は感じている。前作の音楽で高い評価を得た浜渦氏を含め、3人の作曲家が分担して音楽を手掛けている。
FINAL FANTASY XIII-2~願い~
タイトル画面で流れる曲。美しさと悲愴感を併せ持った、作品の世界観に非常にマッチした名曲。これぞ浜渦節!と言わんばかりの一曲。ドラマチックなコード進行の上で鳴るピアノとストリングスのサウンドが印象的。
作曲は浜渦正志氏。
女神の騎士
FF13-2を代表する名曲だろう。ホルンやバイオリンの音色が、前作の名曲「閃光」を連想させる。
ハーフテンポになるところから、溜めて溜めて溜めて、サビ頭でバイオリンのフレーズが炸裂する展開。その瞬間、最高のカタルシスを感じることができるだろう。
こちらも作曲は浜渦氏だ。
疾走
荒野を思わせるような、乾いたロックサウンドの一曲だ。バイオリンのメロディと、間奏のギターのアルペジオが印象的。主旋律は「ノエルのテーマ」と同じものなので、同曲のアレンジバージョンでもある。
作曲は水田直志氏。
ネオ・ボーダム
浮遊感のあるサウンドが心地いい、近未来的な雰囲気の一曲。
透明感のあるシンセの音色に、アコースティックギターのストロークや女性ボーカル(ORIGA氏)が乗り、オーガニックな雰囲気が出ている。歌もインストの一部という感じになっており、主張しすぎず耳馴染みが良い。
ネオ・ボーダムという街を上手く表現した一曲だ。作曲は鈴木光人氏。
ヒストリアクロス
「ヒストリアクロス」の画面で流れる曲だ。部分的に女性ボーカル(ORIGA氏)が入っている。
5/4拍子、6/8(6/4かも?)拍子が切り替わるトリッキーさを持ちつつも、安定感のある心地よいサウンドが楽しめる。浮遊感のあるシンセサイザーとストリングスの調和が絶妙だ。
後半から展開が変わるので、最後まで聴くことをオススメする(ゲーム中では長く聴く機会が少ないのが惜しいところ)。非常にクオリティの高い一曲。
こちらも作曲は鈴木氏が手掛けている。
FINAL FANTASY XIII-2 オリジナル・サウンドトラック
LRFF13(ライトニングリターンズ)
こちらも前作に続き、浜渦・鈴木・水田氏の3名が音楽を担当している。BGM然とした曲が多くなった印象だが、相変わらずクオリティは高い。
箱舟
アンビエントな雰囲気の、美しさと不思議さを持つ一曲だ。女性のクワイアコーラスや、シンセとピアノの旋律が印象的。
作曲は鈴木氏が手掛けている。
光都ルクセリオ
ライトニングが最初に訪れる街で流れる曲。ストリングスの刻みにピアノや木管楽器の旋律が印象的。美しくも、不思議な調性を持った一曲だ。
作曲は浜渦氏。
魂の解放者
戦闘時に流れる曲の一つ。4つ打ちのリズムに乗せたギターやバイオリンの旋律がカッコイイ。ギターソロではテクニカルなスウィープ的フレーズが聴ける。
作曲は水田氏。
LIGHTNING RETURNS:FINAL FANTASY XIII オリジナル・サウンドトラック
FF15
FF15の音楽は劇伴に徹している感じも強く、メロディの主張が強いものは少ないが、どの曲も総じてクオリティは高い。特に戦闘曲はオーケストラに歌も入っていたりと、派手で豪華な曲が多い。
レスタルム
最序盤で訪れる、レスタルムという街で流れる曲。ガットギターとパーカッションのシンプルな編成。明るく楽しげな雰囲気の一曲。
Veiled in Black
戦闘時に流れる曲だ。緊迫感があってスリリングでカッコイイ。FF15らしい一曲。
APOCALYPSIS NOCTIS
エピックなオーケストラサウンドの、勇壮な一曲だ。FF15を象徴する曲だろう。
カエム
アコースティックギターのアルペジオやピアノの音色が印象的。アンプラグドなアレンジが、のどかな雰囲気を出している。
Somnus
FF15のテーマ曲的な位置づけ。ストーリー中の佳境でも流れる。
おわりに
音楽と人の記憶は密接に関わっている。ゲームをプレイするときは、ぜひ音楽も心に刻みつけよう。そうすればゲームをプレイした思い出は、より一層豊かなものとなるはずだ。
FFのサントラがサブスクで聴けるように!(2019年6月追記)
2019年6月、FFシリーズのサントラが、Spotify、Apple Music、Amazon Music Unlimited等の主要サブスクリプションサービスで解禁された。
サントラが1枚数千円することを考えると、非常にコスパが高い。FFの音楽目当てで加入しても十分元を取れると思うのでオススメです。
ポップスの作曲・アレンジに役立てるための、効率的なピアノ練習法【独学OK】
「作曲・アレンジに役立てる」のが目的なので、ポップスやロック等の、いわゆるポピュラー音楽を想定している。次の4点を意識して練習するのが良い。
- コードを押さえられるようにする
- クラシックの教本で基礎練習をする
- メロディを弾けるようにする
- 応用編(好きな曲を練習する、etc.)
ピアニストになるのでなければ、独学でも十分ピアノの習得は可能だ。
1. コードを押さえられるようにする
ポップスの作曲をするには、コードの知識が必要だ。弾き語りでもバンドでの演奏でも、ピアノパートの役割の多くはコードバッキングだ。それにコードが弾ければ、MIDI打ち込み作業も圧倒的に時間短縮できる。
そこで、まずは各種コードを押さえられるようになろう。左手でルート音、右手でその他の構成音(+ルート音)を押さえる。これがピアノでコード弾きをするときの基本スタイルだ。同じコードネームでも転回形が複数あるので、それらも押さえられるようにしておこう。
いきなり12キー全てを拾わずに、シャープやフラットが少なめのキーのダイアトニックコードから覚えていくと良い。お気に入りの曲のコード進行を演奏してみるのも良い練習になる。
トライアド、4和音、ディミニッシュコード、テンションコード、分数コード……必要に応じて、押さえられるコードを増やしていこう。
なお、コードの押さえ方についてはネットで検索するなり本を読むなりして欲しいが、一点重要なことを書いておく。
- ルート音が同じ場合、他の構成音の順番を入れ替えても、同じコードとみなす
(例:「ドミソシ」、「ドソシミ」、「ドシソミ」 → ぜんぶ「CM7」というコード)
ルート音(=最低音)が同じなら、右手の押さえる順番は自由。この大原則を覚えておけば、自分でコードのボイシングを考えられる。きれいな響きになるよう、自分なりに考えて工夫してみよう。
2. クラシックの教本で基礎練習をする
クラシックピアノの教材は、やはり指の運動能力を高める上では最も効率が良い。「指越え」や「指くぐり」など、基本的な指使いを学ぶにも良い。読譜力も身につく。
指のトレーニングツールとしては、「ハノン」がオススメ。初心者から上級者まで幅広く使われている。ハノンを全部やるのは大変なので、練習効果の高いものだけ厳選しよう。下記サイトでは、おすすめの曲が抜粋されている。
練習曲の教本は、バイエルやブルクミュラー、ツェルニーなどがある(←難易度順)。自身のレベルに合わせて選ぼう。
3. 右手でメロディを弾けるようにする
基礎練習で指が動くようになれば、お気に入りのヒット曲の歌メロをなぞることも難しくないだろう。気になったメロディはどんどん弾こう。
慣れてきたらメロディを弾きながら、左手でルート音やコードを押さえてみよう。
また、左手でルート音を押さえる場合は、右手でメロディと同時にコードの構成音を弾くのも良い。メロディとコードの構成音を、3度や6度の関係になるようにするのがポイントだ(そうならないケースも多いが)。これができれば、ピアノ一台で曲を表現するのも可能になる。
4. 応用編
好きな曲を練習する
バンドスコアでもピアノソロの作品でも、好きな曲の楽譜を買ってきて練習しよう。楽器.meのように、J-POPのコード進行が掲載されているサイトを見ながら、音源と合わせて弾くのも良い練習になる。
どんな曲を弾いても音楽力のアップにつながるが、おすすめはジャズ系の作品。ポップスの音楽はジャズがベースになっている部分も多く、使われている和音も上位互換的なものが多い。
なお、ジャズ的な演奏にオススメの教本としてジャズハノンを紹介したい。古くからあるが、今でもよく売れている一冊だ。タイトルに「ハノン」と付いているだけあって基礎的なトレーニングが中心の本だが、ジャズのコードやフレーズを効率よく学ぶことができる。
MIDI打ち込みを、鍵盤のリアルタイム入力で行う
DAWで曲を作る人も多いだろう。MIDIを打ち込むときは、全てのパートを鍵盤からリアルタイム入力しよう。最初は大変かもしれないが、地道に続ければ上手くなっていく。何より、圧倒的な速度で打ち込み作業が進んでいくのは快感だ。どんな練習よりも効果的だと僕は感じている。
練習に必要な楽器
本物のグランドピアノで練習するのが一番良いが、日本の住宅環境を考えると、なかなか現実的ではない。練習には電子ピアノやステージピアノなど、88鍵のハンマーアクションのものが望ましい。夜間でもヘッドホンを繋いで練習できる。
なお、安いMIDIキーボードだと、鍵盤の長さが本物のピアノよりも短かったりする。気持ちよく演奏できないので、練習用途にはあまりオススメできない。また、シンセ鍵盤のような柔らかいタッチに慣れていると、本物のピアノの重い鍵盤で弾くときに大変だ。その逆は割と問題なく行けるので、ピアノタッチの鍵盤で練習するのが良い。
電子ピアノは安いものなら、KORG LP-180は3万円台から売られている。コストパフォーマンスを考えるなら電子ピアノが最適だ。予算と相談して、楽器屋で試奏してから買うと良い。
DTMでも使いやすいステージピアノだと、もう少し高く(10万円台)なるが、YAMAHA CP40 STAGEあたりは、コンパクトでタッチもよくオススメだ。なおステージピアノタイプはスピーカーが内蔵されておらず、キーボードスタンド等も別途必要になってくるので注意。
さいごに
楽しく練習するのが一番大事。作曲やアレンジに役立てるだけなら、必死で練習しなくても何とかなる。気楽にやろう。
関連記事
作曲家・アレンジャーがピアノを弾けるようになるメリット
ピアノの練習をしよう。作曲やアレンジなどの音楽制作を行う人が、ピアノを弾けることのメリットは多い。
プロでもアマチュアでも、ポップスを作る人であっても、ロックバンドで作曲を担当している人であっても、誰しもピアノを習得するだけで、曲作りは断然やりやすくなる。ピアノを全く弾けない状態の人が初心者レベルになるだけでも、曲作りにおいては大いに役に立つ。
今回は音楽制作において、ピアノを弾けることのメリットを挙げていく。
- ハーモニーやアンサンブルを考える上で圧倒的に有利
- MIDI打ち込みの作業効率が格段に上がる
- 耳コピが得意になる
- おいしいメロディを戦略的に生み出しやすい
- アンサンブルの構造を視覚的に把握することができる
- 譜面に強くなる
- おわりに
ハーモニーやアンサンブルを考える上で圧倒的に有利
音楽の三大要素は、リズム、メロディ、ハーモニーだ。音楽を新しく作るときは、必然的にこれらの要素も考えることになる。リズムやメロディを表現できる楽器は多いが、ハーモニーを考えるためには、和音を演奏できる楽器を使う必要がある。
それに適しているのが鍵盤楽器。中でも最適なのはピアノだ。
ギターでも和音は鳴らせるが、同時に最大で6音までしか鳴らすことができない。ボイシングにも制約があるし、複雑なテンションコードやアッパーストラクチャー的なコードを表現するのは難しい。またギターは、メロディと和音を同時に演奏するのが難しく、その自由度も鍵盤楽器に比べてはるかに低い(クラシックギター奏者を想像すると分かりやすい)。
ギタリストならばギターで作曲したくなる気持ちもわかるが、優れた作曲家になりたいのであれば、ピアノで作曲できるようになることをオススメする。指で押さえるだけで音が鳴り、ダンパーペダルで音を伸ばせるというピアノの特性は、ハーモニーを考える上では圧倒的に有利なのだ。
DAWを使わずとも、大まかなハーモニーを確認することができる。これは作業効率上、大きなメリットになる。
複雑なボイスリーディングを含むような和声だと、ピアノでも再現しきれないこともあるだろう。しかし、オーケストラのスコアリーディング(曲全体を確認する作業)でもピアノを使うことから、音楽を"確認"する上で、ピアノより優れた楽器は無いと言っても過言ではない。
ピアノを弾ければ、ちょっとハーモニーを確認したいときでも、軽く鍵盤を叩いてみるだけで済む。ボイシングやリズム、ダイナミクスを少し変えたりして試行錯誤することもたやすい。その都度MIDIを打ち込みシーケンサーを走らせて聴くのと比べて、はるかにシンプルで効率が良い。
MIDI打ち込みの作業効率が格段に上がる
普段マウスでMIDIノートを入力している人は、ピアノを練習し、リアルタイム入力をマスターすることをオススメする。そうすれば打ち込みの効率は飛躍的に高くなる。
MIDIキーボードでリアルタイム入力をする場合、30秒のセクションならば、30秒あればMIDI入力が完了する(細かなCC情報は除く)。多少リズムがズレていても、簡単にクオンタイズもできる。特にピアノやエレピ、オルガン等の鍵盤楽器の打ち込みにおいては、リアルタイム入力は断然有利だ。
もちろん、その他の方法で素早くMIDI入力をすることも可能かもしれない。しかし、リアルタイム入力ならば、必然的に曲のリズムやハーモニー、メロディーを感じながらMIDIを入力することになる。作業をするたびに、体に音楽を叩き込むことができる。これは音楽制作というクリエイティブな作業をする上で、大きな優位点であるのは間違いない。
また、ピアノやエレピのようなパートを打ち込むとき、マウス入力だと、人間が演奏したような演奏データに調整するのは難しいものだ。(ベロシティや音価、リズムのばらつき等の要素が機械的になりやすい)。生っぽいニュアンスを出すのであれば、自分で鍵盤を演奏してMIDIデータを入力するのが一番良い。たとえ演奏データが上手でなくても、それを修正するほうが効率が良い。
ピアノパートに限ったことではないが、鍵盤の演奏能力が高ければ高いほど、MIDI入力の作業効率も高くなる。音楽制作者なら、ピアノが上手いに越したことはないのだ。
耳コピが得意になる
曲作りをするためには、日常的に既存の曲を分析したり演奏して自身の血肉とし、音楽的な感性を高めていくことも大事になってくる。曲のコード進行を分析するメリットについては、このブログでも以前記事を書いている。
ピアノが弾けるようになれば、コード進行分析に必要な「耳コピ」の作業も一気にやりやすくなる。曲に合わせてコードを弾けば、そのコードが合っているか外れているか、瞬時に分かるからだ。
厳密にコードネームを確定するには、コードの構成音を一音ずつ聴き取っていくようなハイレベルな聴き方も必要。しかしそういった作業をする上でも、ピアノを弾けるかどうかで効率は変わってくる。
他の楽器を使って耳コピをすることもできるが、前述の通り、ハーモニーを確認する手段としては、ギターはピアノには及ばない。ギターだと必ず両手がふさがるのもイマイチなところだ。
おいしいメロディを戦略的に生み出しやすい
音楽理論の教本は数多くあるが、良いメロディを生み出す方法については特別語られていない。とはいえ、作曲を理論的な観点から行うときに重要なのが、「コードに対して、メロディがどのテンションノート(9th等)になっているか」ということ。
たとえば、「ルート音とメロディの音が同じ音の場合、ハーモニーに広がりが生まれない」というのは和声を学んだ人なら知っていることだし、作曲が得意な人なら感覚的に理解していることだろう。
もしギターの弾き語りで作曲をしている場合、「コードのルート音とメロディの音程」を瞬時に把握するのは難しいはず(普段から訓練している人は別だが)。しかし、ピアノで作曲をしている人にとっては、こういった情報は常に鍵盤上に表示されているに等しい。これは良いメロディを考えるための大きなアドバンテージとなる。
もちろん、作曲においては自分の感性・感覚が一番大事だ。それでも、上手く行かないときや調子が悪いときに、論理的に考えを突き詰めることで、スランプを抜け出せることも多い。
アンサンブルの構造を視覚的に把握することができる
アレンジ(編曲)における大事なポイントとして、
- パートごとに音域を分けて、低域から高域までまんべんなく音を配置する
という考え方がある。何も考えずに音を重ねていくと、ある特定の音域に音が集中してしまい、全体のサウンドが団子状態になってしまうことも多い。
これを避けるには、全楽器の演奏音域について、ピアノの鍵盤と照らし合わせる癖をつけると良い。
- 歌メロはC4~C5の間
- ベースはE1~E2あたり
- ディストーションギターはE2~A3あたり
- オルガンはA3~E5
例えばこのように、あらゆるパートを鍵盤に置き換え、どのあたりの音域で音が鳴っているかを常に意識しよう。楽器をたくさん重ねていく場合でも、音の配置に無駄がなくなっていくはずだ。音域を意識した音の積み方ができれば、編曲のクオリティも上がっていくだろう。
譜面に強くなる
自分以外のボーカリストや演奏者の力を借りて音楽を完成させる場合、譜面を元にコミュニケーションを取ることも多い。特に管楽器や弦楽器を録音する場合は、玉譜(コード譜ではないオタマジャクシの譜面)が必ず必要になる。
ピアノを習得する過程で、必然的に読譜力も高くなっていく。五線譜をすらすら読めるようになれば、レコーディングのときも慌てなくて済む。
おわりに
楽器はとても奥が深い。ピアノという楽器を本当の意味で弾きこなすには膨大な時間と経験値が必要だ。プロのピアニストになろうと一念発起したところで、大人になってからそれを実現するのは難しいかもしれない。
しかし、作曲や編曲に役に立つレベルで、ピアノを「ちょっと弾ける」ようにするのは、意外と難しいことではない。ポップス系のプレイヤーには独学でピアノを習得した人も多い。
ピアノを独学で練習するための方法も、現代はインターネットで学ぶことができる。実際、僕も独学でピアノを練習し、作編曲に役立つレベルまでは弾きこなせるようになっている。
もしピアノを全く弾けないままマウスでDTMをやっているなら、ぜひピアノを始めてみてほしい。便利なだけではなく、音楽が楽しくなること間違い無しだ。
Jacob Collier(ジェイコブ・コリアー)がスゴい。インタビューを要約・考察してみる
はじめに
今、ジャズ界隈を賑わせているJacob Collier(ジェイコブ・コリアー)という若きミュージシャンをご存知だろうか。
2017年のグラミー賞で2部門を受賞。アカペラと楽器の多重録音で音楽を作り上げる「宅録」のスタイルで音楽を生み出している。ジャズをベースにしていながら、その音楽性は非常に革新的なものだ。
未聴の方は、スティーヴィー・ワンダーの「Don't You Worry 'bout a Thing」のカバーを聴いてみてほしい。彼の凄さが分かってもらえるはずだ。
彼は多くの楽器を自在に操り、歌も上手く、高度な音楽理論(ジャズ理論)にも精通しているというスーパーマンだ。海外だけではなく、日本のプロミュージシャンからも高く評価されている。
今回は彼の音楽を解析しているJune Lee氏が、Jacob本人にインタビューをした動画について、僕が気になった箇所の要約を記事にしてみる(日本語の翻訳が無かったので)。意訳が多く含まれることに注意しつつ、元の動画を理解する補助として活用して欲しい。
ピュア・イマジネーション ~ヒット・カヴァーズ・コレクション~
- はじめに
- 1. リディアン・スケールの連結
- 2. ボイシング(和音の積み方)について
- 3. 微分音を用いたボイス・リーディング
- 4. 倍音列に合わせたチューニング
- 5. グルーヴについて
- おわりに&参考になりそうな本
1. リディアン・スケールの連結
インタビュー動画の1つ目の冒頭で語られているのが「Super-Ultra-Hyper-Mega-Meta Lydian」というもの(動画0:02~)。これは、彼がインプロビゼーション(アドリブ)のときに使用している独自のスケールだ(名前は造語だと思われる)。
これは「Cリディアン→Gリディアン→Dリディアン→…」という風に、リディアンスケールを連続してつなぎ合わせたものとなっている。Jacobの発言をまとめてみる。
五度圏(Circle of Fifth)について
- 五度圏が音楽を作っている
- 五度圏の時計回り(C→G→D→A…)は明るくなっていく、逆は暗くなっていく
- 変格終止(アーメン終止・IV→I)は安心できる感じがする。「そのキーを抱くような」感じ
- 完全終止(V→I)はそのキーに到達する感じがする
Super-Ultra-Hyper-Mega-Meta Lydianとは?
- スケールと呼んでいいかは分からない
- スケールを上がっていくときも、ルートのところで「止まる感じ」にならないのが良い
- リディアンが最も心地よく感じる
- 「最も良い明るさ」を持つサウンドだと思う
逆回りのスケールについて
- (逆回りのスケールだと)五度圏の「暗い方」で音階自体が包まれている感じになる
- 「F→Bb→Eb→Ab」(←コード)というケーデンスも同様の印象になる
「Super-Ultra-Hyper-Mega-Meta Lydian」は、五度圏をリディアンで時計回りに進むことで得られたスケールだった。では、この逆のスケールだとどうなるのか?「CDEF、GABbC、DEbFG、…」のように、メジャースケール等の最初の4音を、どんどんつなぎ合わせていくようなスケールになる。
しかし、Jacobはこのスケールについては「これだと五度圏の『暗い方』で音階が包まれる感じになる」と語っている。あくまでリディアン推しのようだ。
2. ボイシング(和音の積み方)について
次はJacobの和音に関する考え方をひも解いて行く(動画3:27~)。
要約
- 「全てのメジャーコードは5度で組み立てられ、全てのマイナーコードは4度で組み立てられる」という独自の理論を持っている
- Cm7(9,11,13)のコードはむしろメジャーコードのように感じる
- むしろ完全四度で積んだコードのほうがマイナーコードっぽい
- 短9度の音程ができる和音も、普通に使う
マイナーコードはマイナーっぽく感じない?
「C Bb D Eb F A D ※Cm7(9,11,13)」というボイシングのコードについては、「マイナーコード以上にメジャーコードのように感じられる」と語っている。「Ebメジャーの平行調みたいだから」という理由だ。
四度堆積和音について
さっきの和音よりも、もっとマイナーっぽいコードとしてJacobが挙げたのが、「C F Bb Eb Ab Db」というボイシングのコード。
四度で堆積されている和音なので、コードネームを付けるのが難しいが、むりやり表すならば、Cm7-9,11,-13といったところか。Ab6(9,11)の転回形という解釈もできるかもしれない。いずれにせよ、ルートであるCとDbが短9度の音程を形成しているため、一般的には不協和音ということになる。
インタビュアーのJuneが「Jacobの短9度の使い方って、他のあらゆるミュージシャンとは違っているよね」とすかさずツッコミ。これを受けてJacobは別のコードを挙げる。
「A E B D G C」というボイシングで、コード表記ではAm7(9,11)となる。コード的には普通のテンション入りのマイナー7thコードなのだが、短9度の音程を含むボイシングになっていることに注目(B‐C間)。これは不協和音だ。
しかし、この響きについてJacobは次のように語っている。
- 特徴的な響きで、ぼーっとしちゃう
- もっと「欲しい」ときにはエモーショナルな選択だよ
短9度という音程は、最も不自然な響きがしてしまう音程だ。そのためドミナント7thのコードでオルタード・テンションとして使うとき以外、基本的には使えない。しかしJacobはそういった既成の理論を超えたところでハーモニーを感じ取っているのかもしれない。
3. 微分音を用いたボイス・リーディング
動画の10:12~では、「赤鼻のトナカイ」という有名なクリスマスソングを挙げて、微分音を使ったフレージングについて解説している。
GからEへと進む際、その音程は半音3つ分。本来G→F#→F→Eと進むのが普通だが、それを4つに分け、「3/4半音」ずつ下降していくかのようなフレーズを歌っている。「5つに分けても良いよ」とまで言っている。
4. 倍音列に合わせたチューニング
ここからは、インタビュー動画のPart 2について触れていく。興味深いのが、チューニングについて語るシーンだ(動画5:35~)。
要約
- 平均律のチューニングは、ジャズの和音を成立させるためには欠かせない。基本的にはありがたい、良いもの
- しかし、「純正律でチューニングしたほうがコードの響きは良くなる」ことに気づいた(倍音列の関係)
- それ以来、「全ての長三度を低くし、短三度を高く」設定するようになった
- C6(9)など、純正律じゃ成立しないコードもある
純正律について
楽器や人の声などを含む、自然界の音には倍音が含まれる。倍音を第1倍音、第2倍音、第3倍音……と順に並べたものを倍音列という。
この倍音列に従ったチューニングが純正律だ。自然な倍音列に即したチューニングなので、より美しい響きがすると言われている。
倍音列に存在する長3度の音は、平均律と比較して約14セントも低い。半音が100セントなので、これは比較的大きなズレだと言えるだろう。
※参考:倍音 - Wikipedia
声を重ねてハーモニーを作ることが多いJacobが、純正律の響きに興味をもつのは必然かもしれない。
Jacob独自のハーモニーの探求
倍音列に従って音程を考えると、短7度(7th)の音は、平均律と比べて31セントも低くなる。
この7thの音をルートとして扱うと、当然コード全体の音が31セント低くなる。そこでJacobは、チューニング基準をA=442Hz→A=432Hzに下げたらしい(動画7:30~)。
同じ曲で異なるチューニングを混在させるのは、スリルがあってとても面白いと語っている。なかなか常人にはたどり着けない発想である。
5. グルーヴについて
動画10:58~では、グルーヴに関する彼の考えを聞くことができる。
要約
- 「全ての半音が等間隔に存在するのが、あまり心地よくない」のと同じように、全ての拍や音符が同じサイズになるのは窮屈だと考えている
- クオンタイズの利便性そのものは、素晴らしいものだと考えている
- Jacobにとってエキサイティングなグルーヴとは、必ずしもストレートなリズムではない
- 2つの拍があった場合、「3:2」や「4:3」のように解釈すると面白い
Jacobのグルーヴへの見解
Jacobはエキサイティングなリズムの例として、サンバや、モロッコの伝統音楽「グワナ」を挙げている。Jacobによると、そういった音楽では3つの音符が「4:2:3」という割合の長さで鳴っているそうだ(動画の12:14~)。そして、これこそまさに彼が自分の部屋で追求していたグルーヴそのものらしい。
グルーヴは、ハーモニー的な要素等とは別のベクトルに、音楽的な推進力を付加してくれると彼は語っている。
2つの拍の割合について
Jacobがカバーした「Close to You」の話題が挙がると、彼は拍の長さについてユニークな考えを話してくれる。
「2つの拍がある場合、前の方を長く取ることで、みんな興奮する」という現象があるそうだ。Jaobもその現象について理論的に解明しようとしていたそうだが、彼の出した結論は次の通り。
- ビートを5つに分けて「3:2」と解釈する
- ビートを7つに分けて「4:3」と解釈する
こういった解釈を行っているそうだ(動画の13:25~)。「いい感じに聴こえるかどうかが根本的には大事」とも語っている。
おわりに&参考になりそうな本
Jacob Collierは、その天性の才能ばかりに目が行ってしまうが、インタビューを聞くと、理論的な側面にも精通していることが分かり、勉強熱心な努力家という一面も見て取れる。これからの活躍も楽しみだ。
最後に、Jacobの音楽性を紐解く上で参考になりそうな本を2冊紹介する。
これだけ「リディアン推し」なJacobのことだから、たぶんこの「リディアン・クロマティック・コンセプト」はみっちり習得しているような気がする。
「Negative Harmony」についての記述がある本。
なお、Negative Harmonyについては、少なくとも動画を見る限りではJacobが強く主張している理念かどうかは分からなかったので参考までに(Jacob自身、Negative Harmonyの理論には非常に詳しいようだが)。
クロノ・トリガー「樹海の神秘」のコード進行を徹底分析 ~テンションノートが織り成す神秘のアルペジオ~
はじめに
今回はクロノ・トリガーの「樹海の神秘」のコード進行を解析していく。前回の記事同様、ゲーム音楽ならではの教会旋法的な音使いがされている。また、ゲームのメインテーマ曲(「クロノ・トリガー」)との共通項ともなるような、隠れたエッセンスの存在についても紹介する。
- コードは耳コピで採譜しています
※Key = Db
イントロ~Aセクション
[Intro]
| GbM7(13) | | Fm7(9) | |
| GbM7(13) | | Fm7(9) | |
[A]
| GbM7(13) | | Fm7(9) | |
| GbM7(13) | | Fm7(9) | |
| GbM7(13) | | Fm7(9) | |
| GbM7(13) | | Fm7(9) | |
美しいアルペジオが印象的だ。IVM7→IIIm7というコード進行はよくあるが、注目すべきは、IIIm7であるFm7のコードに、9thのテンション(G音)が加わっているという点。これは通常のメジャースケールに含まれる音ではない。結果的に主旋律もDbリディアン・スケールとなり、モード的な雰囲気が出ている。
Aセクションでは、主旋律がGbM7(13)の部分では#11th(C音)、Fm7(9)の部分では9th(G音)のテンション音で長く伸ばしているのが特徴的。これにより、実に神秘的な雰囲気の響きが生まれている。
Bセクション
| Ebm7(9) | B7(9,+11) | Bbm7(9) | |
| Ebm7(9) | B7(9,+11) | Cm7(11) | F7 |
2小節目のB7(9,+11)は、その次のコードに対するドミナントコードだ(半音上から解決するパターン)。
Cm7(11)以降は、次のセクションへ向けたツーファイブだ。主旋律のF音がペダルポイント的になっていて、直前のコードからのつながりが自然になっている。
主旋律のほとんどがテンション・ノートになっているのが見事だ。
Cセクション
| Bbm7(9) | Gm7(9) | Ebm7(9) | Fm7(9) |
| Bbm7(9) | Gm7(9) | Ebm7(9) | Fm7(9) |
| Eb/Db DbM7 Cm7 | Fsus4 F |
トニックのマイナーコード(VIm)から始まり、短三度下のマイナー7thコードへ進行していく。実はこの2小節は、前回の記事で紹介した「クロノ・トリガー」という曲のコード進行と同じ。
「クロノ・トリガー」ではAm7 → F#m7という進行が印象的だったが、この曲ではそれをさらに発展させたものとなっている。作品のサウンド感に一貫性を持たせるための、絶妙な隠し味といえるだろう(意識してやっているのか、それとも無意識のうちにやっているのかは不明)。
このセクションでも、やはり主旋律が全て9thのテンション音を経由する形となっていて、とても美しいハーモニー感が演出されている。
このあとイントロに戻る。最後のFは、GbM7に対してのドミナント的な役割を果たしている(GbM7はBbmと構成音が似ている)ため、イントロへと上手くつながるようになっている。
おわりに
SFCという同時発音数に制約があるハードの中で、これだけの美しいハーモニーを生み出すことができているのは、しっかりとした音楽理論に基づいた作曲の賜物といえるだろう。
これを22~23歳という若さで作曲した光田康典氏。彼の溢れんばかりの才能を感じさせる一曲だ。